2015 Fiscal Year Annual Research Report
自然生息地の植物ウイルス多様性とその成立メカニズム
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15J00628
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
神谷 麻梨 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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Keywords | 植物ウイルス / RNA-Seq / ウイルス生態学 / Arabidopsis halleri / アブラナ科 / 重複感染 |
Outline of Annual Research Achievements |
該当年度は、前年度にRNA-Seqを行った1地点のサンプルの結果解析を中心として、その他2か所でのRNA-Seq実験も行い地点間・植物種間での比較検討を行った。
1.結果の解析(1地点目) 野生植物ハクサンハタザオにおいて、RNA-Seqにより、ゲノム情報が既知である全種のウイルスの感染有無をクリアに判別する方法を確立した。また1宿主植物内に共感染しているウイルス種間において、特定のウイルスによる重複感染の促進効果が働いている可能性を示した。植物側のトランスクリプトーム解析からは植物側のウイルス感染への応答が見られており、これらを現在論文にまとめ投稿中である。ウイルスの宿主への影響評価では、無病徴な感染が多く存在する一方で感染ウイルスの種数や特定のウイルスと病徴との間に相関がみられる事を明らかにした。野外での適応度の予備的な調査では、他の県境要因の影響(シカの食害など)が野外では大きく感染との間に明らかな関係はみられないという結果が得られた。 2.地域間・宿主間でのウイルスの比較(2,3地点目) 上記ハクサンハタザオ以外の野生アブラナ科植物が共存する野外調査地2地点においてサンプリングを行い、RNA-Seqにより感染ウイルス種を決定した。感染ウイルス種は3地点で少しずつ異なったものの、3つの調査地で共通に感染しているウイルス種を見いだした。ウイルスのゲノムの解析からは、宿主植物種よりも地域の違いによってウイルスがまとまることが明らかになった。さらに1つ目の調査地で見られたような重複感染促進の傾向が再び観察され、このウイルスの自然環境課における働きの重要性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
論文の公表が予定より少し遅れているが現在投稿中であり、研究内容は順調に進んでいると考えたため。
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Strategy for Future Research Activity |
上記1の調査地において、今年度フィールドでデータを取った植物の開花数・成長量のデータとウイルス感染との関係について検討する。また、今回探索の対象としていない未知ウイルスの感染の有無についてもde novo assemblyにより調べる予定である。 さらに今後は、これまでの研究で見つかったウイルス種の感染や、重複感染の傾向が野外に一般的にみられる事なのかを調べるために、近畿の数十か所の調査地においてハクサンハタザオの野外調査とRNA-Seqを行う。それらの調査地域間での感染ウイルス群集の違いを、地点の環境要因と関係付けて検討する。 並行して、野外データから示唆されるウイルスの宿主特異性やウイルス種間・ホスト-ウイルス間の相互作用を検討するため、実験室での感染実験についてもひきつづき準備を進める予定である。
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Remarks |
所属研究室のホームページ作成を担当した
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Research Products
(7 results)