2015 Fiscal Year Annual Research Report
先カンブリア時代の下部地殻における高温条件下での流体-岩石相互作用
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15J00683
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
小泉 達也 筑波大学, 生命環境科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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Keywords | 流体-岩石相互作用 / 加水反応組織 / 鉱物平衡モデリング法 / リンポポ |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度1年目は、南アフリカ共和国・リンポポ岩体南縁部のHout River剪断帯の下盤側に位置するRhenosterkoppies地域に産する苦鉄質変成岩について、「鉱物平衡モデリング法を利用した温度-圧力-流体の3軸を考慮した変成履歴の推定」、および、「流体が上盤と下盤の両者に与えた影響の違い」を明らかにするために研究を進めた。調査地域は剪断帯の上盤と約20km 程度しか離れていないため上盤との関連を明らかにする絶好の場所である。当該年度の補助金は、調査費、分析費、学会費等に当てられている。
当該年度の研究手法および結果は以下の通りである。①岩石薄片作成および偏光顕微鏡を用いた薄片の観察を行った。②電子マイクロアナライザーを用いた分析を行い、「単斜輝石+斜長石+H2O=>アクチノ閃石+緑廉石+石英」の鉱物反応組織(加水反応組織)を確認した。③鉱物平衡モデリング法の適応し、ピーク変成温度圧力条件(温度=640-680 ℃、圧力=7-8 kbar)と加水反応の進行した条件(温度=580-640 ℃、圧力=4-5 kbar、H2Oの増加量=0.2-1.0 mol.%)を推定した。
本研究で得られた当該地域の変成温度圧力条件は、先行研究の結果と非常に調和的な結果である。また、下盤側で起こった加水反応の進行した条件の推定は、上盤側で進行した条件と概ね一致するものの、明らかに下盤側へのH2Oの増加量が少ないことを示唆する。つまり、H2O流体は剪断帯を主な経路として上盤側だけではなく下盤側への両方に浸透したが、浸透した量は上盤側ほど多く下盤側ほど少ないことが研究を通して確認された。本研究成果はリンポポ帯のテクトニクスを考える上で重要な情報であり、地殻内部の流体の挙動を知るためにも重要である。これらの成果をもとに、当該年度に国際学会で発表を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度は研究実施計画に記載通りに研究が進展し、研究対象地域(Rhenosterkoppies地域)の変成条件の推定、および、後退変成作用時に増加したH2O量を推定することができ、期待通りの成果が得られた。また、当初予定していた日本地質学会に参加することはできなかったものの、その代わりに2016年2月にアルジェリアで開催された国際学会に出席し発表を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究は研究計画書に記載されてある通り、「流体(特にH2O)」に着目し、先カンブリア時代の下部地殻に存在する流体が岩石に与える影響や当時のテクトニクスについて解明することを目標に進めていく。研究対象地域は、採用年度1年目と同じ大規模な流体が局所的に流入したことで特徴づけられるリンポポ岩体南縁部(例えば、Murchison地域)を中心に研究を行う。特に、2016年3月に地質調査済みのMurchison地域に産する変泥質岩に含まれる最大7cm程度の藍晶石は流体の影響により2次的に形成されたと考えられており、その形成過程を解明することは流体が岩石に与える影響を解明することにつながる。地質調査に関しては必要があれば再度行う予定である。研究手法は昨年度に実施した内容に加え、流体包有物の測定やラマン分光法を用いた流体包有物の同定を行う。そして、今までの研究成果をまとめるとともに、論文の執筆や学会に参加(例えば、国際ゴンドワナ連合)することで研究成果を公表していく。
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Research Products
(2 results)