2016 Fiscal Year Annual Research Report
フラーレンC60を用いた新規ハイブリッド触媒の開発
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15J00702
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
中塚 和希 大阪大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | 炭素材料 / 金属ナノ触媒 / Co(salen)錯体 / 熱分解 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでの研究によりフラーレンC60を用いることでアンモニアボランなどの水素キャリアからの脱水素反応に有効な触媒設計を試みてきた。当該年度は、そこから得られた知見をもとに、炭素材料および金属有機錯体に着目し、新規金属ナノ触媒の調製法の開発を行った。有機金属錯体としてはCo(salen)錯体を採用した。Co(salen)錯体は、平面構造を有し、均一系触媒として高い触媒性能を示すことが知られている。平面構造を有することで炭素担体とのπ-π相互作用をより強く利用することができ、Co(salne)錯体の芳香族やアルコールの酸化反応に対する触媒性能を向上できるのではないかと考えた。 炭素担体に含浸法によりCo(salen)錯体を担持したものを前駆体として様々な温度で熱処理を施し、Co(salen)錯体のCo種の構造変化をあらゆる測定法を用いて追跡した。その結果、適切な熱処理を加えることで炭素担体上にCo種をシングルサイト状態で担持できることを見出し、その触媒としての優位性について検討した。高輝度光科学研究センター(SPring-8)での放射光XAFS測定やTEM観察、XRD測定などの分析手法をうまく組み合わせることで炭素材料では難しい金属活性点の構造を解析し、触媒反応に与える影響を調査した。 また、当該年度において計2報の論文投稿および国内外学会の9件の発表を行うなど、多くの研究成果を出している。これらの研究成果をフィードバックすることで、当該研究の更なる発展が期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当該年度は、金属有機錯体に着目し、新たな金属ナノ触媒の調製法の開発を行った。調製方法は既存の方法に従った。Co(salen)をカーボン担体(活性炭(AC),白鷺)に含浸担持し、窒素下でさまざまな温度で2 h加熱処理することによりCo/AC-salen-T(Tは加熱処理温度)を調製した。調製した試料はXRD、in-situ XAFS等を用いて詳細に分析を行い、まずはカーボンに担持したCo(salen)の熱処理に伴う構造変化を追跡することを検討した。その結果、以下のような推定に至った。Co(salen)の構造は、300 ℃程度において崩壊が始まる。しかし、500 ℃まではCo-N結合は維持され、500 ℃以上の温度ではCoの粒子化が進行し、700 ℃ではCo粒子のみが存在する。炭素上の金属活性点構造の同定は、FT-IRやUV-visなどの分光法を使うことできないため、一般的に困難であるが、本研究では、複数の測定方法を用いることで、活性点構造の推定を実現した。 同定されたCo活性種の構造が触媒性能に与える影響を調査するために、調製した触媒を用いてエチルベンゼンの酸化反応を行った。4 hでの反応結果を比較すると、Co/AC-salen-400を用いた場合、Co(salen)錯体と比較して約2倍にまで活性が向上した。これは、電子的に乏しいCo活性種が均一で高分散に担持されているためであると結論付けた。これらの結果は、当初の予定より早く結果を得ることができた。そのため、当該年度中に論文や学会等で発表することができ、学術的にも高い評価を得た。現在、当該年度に得られた解析法を生かして、有機金属化合物としてMetal organic frameworks (MOFs)などを応用できないか検討している段階である。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、有機金属化合物として錯体を用いて触媒の調製を試みた。炭素担体上への単核金属の固定化は、一般的に困難とされており、熱処理という簡便な方法で実現できたことは、大きな成果であると言える。またこの結果は、既に学術誌にも提出しており、学術的にも高く評価され、Physical Chemistry Chemical Physicsのフロントカバーを飾った。 今後の検討課題としては、有機金属化合物としてMetal organic frameworks (MOFs)を応用することを検討している。MOFsは、有機リンカーと金属クラスターから成る規則性多孔体であり、さまざまな分野で応用が試みられている材料の一つである。その応用の1つとして、近年、MOFを形成する金属クラスターを有機合成の金属活性点や金属ナノ粒子を調製する際の金属源として応用する試みがなされている。しかし、金属ナノ粒子を調製する際に重要となる加熱処理温度が構造に与える影響についての検討は十分になされていない。 そこで、今後の研究課題として、Ni-MOF-74に対してさまざまな温度で熱処理を行うことで、Ni活性点を活性化し、特異な性能を発現させ、触媒反応へと応用することを目指す。これまでの研究により、既にオレフィンの水素化などにより特異な触媒性能が得られることを見出している。今後、調製した触媒の金属活性点の詳細な構造解析と特異な触媒性能が発現する要因についてより深く検討を進めていく予定である。
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Research Products
(11 results)