2016 Fiscal Year Annual Research Report
Insight into the Adaptive Evolution and Diversification in Erpobdelliformes
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15J00720
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
中野 隆文 広島大学, 教育学研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | 系統分類 / ヒル類 / 分子系統 / 再検討 / 東南アジア |
Outline of Annual Research Achievements |
東南アジアに分布するイシビル形亜目捕食性ヒル類の分類学的位置について,前年度に続いて系統分類学的研究を行った.東南アジアより過去に記載された4種(Mimobdella buettikoferi・M. thienemanni・Scaptobdella horsti・Acrabdella sumatrensis)のタイプ標本について外部形態・内部形態の形質状態を精査した.結果それら4種全てが,直行型の咽頭を有することが明らかになった.この直行型の咽頭に加えて,これら4種の生殖器官の形質状態から,上記4種がイツウコウビル科に所属することが判明した.また,平成27年度中にタイ・ボルネオ島より新たに得られた東南アジア産捕食性ヒル類についても,その形態と分子系統的位置について研究を行った.どちらの標本も,直交型咽頭を有し,なおかつ生殖器官の形質状態はイツウコウビル科のそれと合致した.したがって,東南アジアに生息する大型捕食性ヒル類は,その全てがイツウコウビル科に所属していることが判明した. 東アジア産ナガレビル科ヒル類の種多様性研究については,既知種であり,なおかつ東アジア地域に広域に分布すると考えられているキバビル(Odontobdella blanchardi)についてその再検討を進めた.国立科学博物館に収蔵されている本種のタイプ標本を調査し,消化器官の形質状態について,その胃に一対の盲嚢構造を有することを明らかにした.加えて,既知の系統関係とこの消化器官の形質状態とが一致していることも明らかになった. 加えて,受入研究者である富川准教授の許可の元,ヒル類に限らない無脊椎動物の系統分類学的・進化学的研究に共同研究者(研究協力者)として関わることが出来た.それら他無脊椎動物の研究成果についても着実に論文化に結びつけており,ヒル類に留まらず研究の幅を広げることが出来た.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
第2年度目は,第1年度目に調査の機会を得た多くのタイプ標本そして,新規捕食性ヒル類の標本の形態観察・そして分子系統解析を滞りなく進めることが出来た.得られた結果は,東南アジア産捕食性ヒル類の分類学的知見,そして当該地域のヒル類相解明に向けた大きな一歩になると確信している.加えて,上記研究によって明らかになった捕食性ヒル類の系統関係や形質状態は,捕食性ヒル類全体の進化史を考察する上でも新たな視座をもたらす物で有り,そのような論文執筆に直結する成果を第2年度中に得ることが出来た. 東アジア産ナガレビル科ヒル類の種多様性・進化史研究については計画からの遅れが見られるが,広域分布とされてきたキバビルのタイプ標本を調査することが出来,この成果によって,今後本種に含まれていた偽隠蔽種を明らかにすることが出来ると期待される. このように捕食性ヒル類の属レベル以下での種多様性・進化史研究には遅れが見られるものの,イシビル形亜目全体での系統学的・進化史研究,そして既知種の分類学的再検討について論文化に繋がる成果を十分にあげることができた.現在この成果について論文執筆を開始しており,第3年度前半には投稿の予定である.以上の理由より,本研究計画はおおむね順調に進展していると判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は本研究計画の最終年度にあたり,この2年間で得られた成果を着実に論文化することを第一目標とする.東南アジア産捕食性ヒル類については,その再記載・新種記載に留まらず,系統解析・進化史について考察した論文の形でまとめ,年度前半には国際学術雑誌に投稿する予定である. 東アジア産捕食性ヒル類についても,年度前半で,キバビルのタイプ産地より標本を採集するよう努め,タイプ標本と追加標本に基づいた本種の再記載論文を投稿する予定である. 加えてμ-CT等の技術も用いたヒル類標本の形態観察手法を試用し,本研究計画の総括ならびに終了後の系統分類学的研究に繋がる結果を得られるよう研究を進める.
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