2016 Fiscal Year Annual Research Report
近隣スケールの社会経済的な居住分化の観点から見た空間的公平性に関する研究
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15J00730
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
上杉 昌也 立命館大学, 衣笠総合研究機構, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | 近隣 / アクセシビリティ格差 / ジオデモグラフィクス / 地理情報システム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、近隣レベルでの社会経済的居住地構造に基づく近隣施設・サービス等の空間的不均衡性の有無やその様態を明らかにすることを目的とするものである。まず本年度は、第一に研究計画の仮説1の検証のため、居住者の社会経済的属性と質的特性を考慮した周辺施設立地の空間的近接性についてGISを用いて検討し、両者の関連性に関する統計分析を行った。また、第二に研究計画の仮説2の検証に関連して、居住者の移動データであるパーソントリップ調査を用いて地区レベルの居住者特性との関連性を分析した。 第一の分析では、経済水準を含む小地域での居住者情報を要約したジオデモグラフィクスの社会地区類型を活用し、居住者属性と近隣施設・サービスへのアクセシビリティ格差との関係について、全国スケールでの検証を行った。その結果、地方都市の共働き世帯や高齢化地方の人々の多い地区類型ではいずれの施設までの距離も短い傾向があるが、他の社会地区類型では施設の種類によって一貫した傾向は見られないことなどが明らかになった。人口密度等の影響を統制しても居住者属性によってアクセシビリティに有意な差がみられるが、その定義や施設の種類によっても異なる。なおこれらの成果の一部は、2016年人文地理学会大会にて口頭発表を行っており、今後論文として取りまとめる予定である。 第二の分析では、日常的な移動機会である通勤および買物目的の移動に着目し、個人属性のほか建造環境を含む近隣環境および社会的文脈の役割について明らかにした。ここでもジオデモグラフィクスを活用して、特に通勤目的の自動車や公共交通選択において文脈効果の存在を明らかにした。一方で、買物目的では社会地区類型間の差異は比較的小さいなど、移動目的によっても効果が異なることも明らかになった。なおこれらの研究成果はすでに論文としてとりまとめて公表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
居住者の行動パターンを明らかにする人の移動データの分析においては当初予定していた時間的な側面については未だ十分な検討ができなかった。一方で、近隣スケールでの社会経済的居住分化の検討においてはJSPSによるERCとの協力による特別研究員の海外渡航支援事業のもと、オランダ・デルフト工科大学での共同研究に参加できたことにより当初の計画以上の進展が期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の成果を踏まえ、引き続きデータの分析を進める。具体的には、研究計画の仮説3を検証するため、これまでに明らかになった居住者階層と近隣施設特性や行動パターンとの関連性について、近隣スケールでの居住地による差異を明らかにする。また最終年次であることを踏まえ、得られた成果についても適宜公表を進める。
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Research Products
(9 results)