2015 Fiscal Year Annual Research Report
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15J00738
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
小長谷 達郎 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | 精子競争 / 無核精子 / 成虫越冬 / 季節多型 |
Outline of Annual Research Achievements |
秋に出現するキタキチョウの夏型オスと秋型オスの繁殖成功度を明らかにするには、夏型オスと交尾した秋型メスを越冬させ秋型オスと再交尾させ、産下卵の父性を判別しなければならない。野外においても秋型メス体内で夏型オスと秋型オスの精子競争が生じているためである。そこで、秋型成虫を野外または室内における飼育環境下で越冬させたところ、一部の個体が越冬に成功した。越冬中の死亡率を軽減する余地があるものの、夏型オスと秋型オスの繁殖成功度を測定する実験を今後行なうために必要なデータを得た。さらに、父性判別に必要な遺伝マーカーの開発にも着手した。 キタキチョウを含む鱗翅目昆虫のオスは有核精子と無核精子という2種類の精子を生産する。無核精子も交尾後にメスの精子貯蔵器官に移動するため、無核精子が長く精子貯蔵器官にとどまる場合は、直接精子競争に関与する可能性も考えられてきた。より簡便に実験できる単婚制のアゲハチョウ類のメス体内における精子動態や活性に関するデータが既に得られていたので、それを解析したところ、無核精子の活性がメスの精子貯蔵器官への到達後まもなくして失われることがわかった。さらに、キタキチョウでは、無核精子そのものがメスの精子貯蔵器官から交尾後数日以内に消失することが明らかとなった。 キタキチョウの夏型オスが秋に羽化する意義として、越冬の回避が挙げられてきた。標識再捕獲法による調査結果を解析したところ、越冬後の秋型成虫の個体群サイズは越冬前の半分程度になることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画の順序を変えたため、父性判別は達成できなかったものの、キタキチョウの越冬前後の個体群動態を明らかにすることができた。無核精子のメス体内における動態も明らかにできた。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究により、飼育環境下で秋型メスに越冬を経験させることが可能であるとわかった。遺伝マーカーの開発により父性判別を可能とし、夏型オスと秋型オスの授精成功度を推定することを検討している。
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