2016 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15J00738
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
小長谷 達郎 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | 生殖休眠 / 季節多型 / 越冬成功度 / 生存率 / 標識再捕獲法 / 鱗翅目 / 地理的変異 |
Outline of Annual Research Achievements |
キタキチョウの秋型メスは越冬前に夏型オスと越冬後に秋型オスと交尾している。鱗翅目昆虫では後から交尾したオスの精子が優先するのが普通であるため、秋型オスの方が夏型オスよりも有利であると考えられてきた。それでも、関東地方で秋に羽化するオスの約半数が夏型であることから、オスが夏型として羽化する意義が存在すると想定できる。その一つの候補が精子の越冬成功度の向上である。もし秋型メスの越冬成功度が秋型オスよりも高いのであれば、夏型オスが秋型メスに精子を託すことで自らの精子の越冬成功度を高めることができると考えられた。しかし、これまで得られていた屋外ケージでの飼育実験の結果と野外における標識再捕獲調査の結果を最新の手法により解析したところ、秋型成虫の越冬成功度に雌雄差がないことがわかった。精子の越冬成功度の向上では夏型オスの出現を説明できないといえる。 オスが夏型として羽化する意義が越冬の回避に関係するのであれば、夏型オスの頻度は生息地の冬の厳しさと関係すると予測された。そこで、冬の厳しさの異なる日本各地において夏型メスを採集し、子を20℃10L14Dもしくは25℃10L14Dで飼育し、羽化個体の季節型を記録する実験を行なった。両型のオスの頻度に地理的変異は認められなかった。この結果を裏付けるために、平年の最高気温が20℃台になる日の前後に、本種の分布北限に近い盛岡から亜熱帯の沖永良部島で飛翔中のオスの季節型を調べた。両型のオスの頻度に地理的変異は認められなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
夏型オスが秋に出現する意義を越冬成功度の雌雄差や冬の厳しさによって説明できないことがわかった。この結果は、夏型オスが出現する背景として精子競争が重要であることを強く示唆している。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究は、夏型オスが精子競争で不利ではない可能性を示唆している。現在マイクロサテライトマーカーの開発も進めており、今後は精子競争に関する研究を重点的に進めていく予定である。
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