2015 Fiscal Year Annual Research Report
重症度、臓器連関を考慮したmicroRNAによる急性心不全の病態解明
Project/Area Number |
15J00784
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
小山 智史 京都大学, 医学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | 急性心不全 / バイオマーカー / マイクロRNA |
Outline of Annual Research Achievements |
社会の高齢化に伴い心不全の発症数は増大しており、社会医学・医療経済的に問題となりつつある。本疾患についての理解を深め、診断・治療を適正化することは重要である。このような観点から多くのバイオマーカーが開発され使用されているが、いまだ我々の心不全に関する理解は十分ではなく、新規のバイオマーカーの開発およびそれによる病態の理解が必要である。一方、血液中のマイクロRNAはバイオマーカーとして近年盛んに研究がなされている。マイクロRNAは血液中にて小胞に包まれて安定して存在しており、臨床血清検体から正確に測定することができるとされている。 これは多方面の疾患においてバイオマーカーとしてふるまうことが報告されており、心不全分野においてもすでにいくつかの報告がある。しかし、その生理的意義や動態についてはまだ未解明な部分が多い。本研究では心不全における急性増悪とその寛解という現象に着目し、その経過中における血清中のマイクロRNAの変動を検討する。急性増悪において強調された病態を治療介入による安定後の状態と比較することで心不全の病状を反映する新たな血清マイクロRNAが探索できる可能性は高いと考えている。これを通じて病態についての理解を深めることが本研究の目的である。 具体的には心不全の急性増悪にて入院となった患者群の入院時血清と多くの患者で病態の寛解が得られる入院後7日目の血清を臨床情報とともに収集する。収集した血清より小胞中のマイクロRNAを抽出し定量を行う。このようにして得たマイクロRNAの血清中の存在量やその治療による変化量を、疾患予後やその他の臨床情報と比較検討し生理学的意義を検討する予定である。また、これによって得られた知見の心不全における分子生物学的意義を検討するため動物モデルによる検討も予定している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
血清中のマイクロRNAは微量であり、正確な測定を行うためにまずは測定系の確立から取り組む必要があった。さまざまな条件を検討したのち比較的安定して測定することができる方法を確立することができた。この測定法を用いて、すでに採取してあったサンプルよりスクリーニング実験を行った。この実験の結果、いくつかの疾患関連マイクロRNAを検出することができた。これについて各症例ベースの検討を行った。結果としてあるマイクロRNAが急性心不全患者において重要な臨床指標と相関することを見出すことができた。この結果は今後の血清中のマイクロRNA研究の重要な基礎データとなる可能性を示唆しており現在論文投稿準備中である。
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Strategy for Future Research Activity |
今回の検討において急性心不全患者の血清中においてマイクロRNAはその疾患の状態を反映しつつ変動することが示された。今後はこの変動がどのような機序に基づいて生じているのかを検討していく予定である。また、本研究の最終目的はこのように血清中で変動するマイクロRNAが遠隔臓器において作用を示し、心不全の病態形成に関わっている可能性を検討することにある。具体的には急性心不全を模した血行動態異常をきたす介入を実験動物に対して行い、このような異常に対する血清マイクロRNAの反応を検討しまた、変動したマイクロRNAが全身においてどのような作用をもたらすかについて詳細に検討していく予定である。
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