2016 Fiscal Year Annual Research Report
水環境中の物質輸送予測の高度化に向けた非一様・非定常流中の凝集ダイナミクスの解析
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15J00805
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
杉本 卓也 筑波大学, 生命環境科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | コロイド / ヘテロ凝集 / 物質輸送 / 電荷反転 / 多価イオン / イオン特異性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,水環境中の物質輸送予測の高度化を目指し,コロイド粒子の凝集に対する流れ場の動的影響を明らかにするために,非定常剪断流中でのコロイド粒子の凝集ダイナミクスを解明することを目的とする.採用2年目である当該年度は,申請時の計画から修正して,スイス連邦・ジュネーブ大のBorkovec教授の指導の下,異符号に帯電した粒子間の凝集および帯電挙動への多価イオンやイオン特異性の影響に関する系統的な研究を行った.当該年度の研究成果は,以下の通りである.
栄養塩であるリン酸や毒性の強いヒ素酸といった陰イオンは,鉄酸化物のように正に帯電したコロイドに吸着し,コロイドとともに移動すると考えられる.コロイドの移動特性は,凝集によるコロイドのサイズ増加に大きく左右されるため,吸着性イオンの存在下での凝集挙動への理解は,水・土壌環境中の物質移動予測において重要である.また,実際の環境中では,異符号に帯電した粘土鉱物と鉄酸化物といったように,異なる粒子間の凝集であるヘテロ凝集も重要となるが,吸着性イオンが異符号に帯電した粒子間の凝集に与える影響について,実験的検討が行われていなかった.そこで,異符号に帯電した粒子の混合系に,陰イオンの異なる種々の電解質を加え,ヘテロ凝集の電解質濃度依存性の測定および理論との比較・検討をおこなった.その結果,正に帯電した粒子に陰イオンが過剰に集積し電荷反転を起こす領域について,ヘテロ凝集が反発的になることを観測した.また,電荷反転の起こる濃度以上の領域において,ヘテロ凝集は正に帯電した粒子同士の凝集よりも反発的であることが分かった.これは負に帯電した粒子が常に大きな負電荷を有しているため,ヘテロな粒子の組み合わせにおける静電斥力がより大きいためだと結論づけられた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
申請時の計画から大きく修正して,ジュネーブ大にて吸着性陰イオンの存在下での異符号に帯電したコロイド粒子間のヘテロ凝集に関する系統的な研究を行った.この成果を発展させ,同様に吸着性イオンを用いた凝集実験を非定常流中で行うことで,当初の計画よりもインパクトの高い研究成果が得られることが期待できる.しかしながら,ジュネーブでの国際共同研究に専念していたために,非定常流中の凝集実験に若干の遅れが生じているため,次年度は実験と解析を同時並行して進める予定である.
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度である次年度は,当該年度の研究成果を活用し,今後の研究を推進していく.非定常流中の凝集実験は,既製のフローセル中にシリンジポンプを用いて振動流を発生させ,この振動流によるコロイドの凝集速度を顕微鏡による直接観察と画像解析ソフトを組み合わせながら,測定していく.非定常流中での凝集速度の解析手法の構築についても,数値計算ソルバーを活用しながら,同時並行的に進めていく.
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Research Products
(4 results)