2015 Fiscal Year Annual Research Report
日本列島におけるミヤコグサの開花期の地域適応と種内分化機構の解明
Project/Area Number |
15J00897
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
若林 智美 京都大学, 人間・環境学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
|
Keywords | ミヤコグサ / flowering time / 全ゲノム関連解析 / natural variation |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、(1)ゲノム比較や全ゲノム関連解析といったゲノム学的手法を用いて、ミヤコグサの開花時期の違いをもたらす遺伝的要因を挙げること、そして(2)形質転換により挙げられた候補遺伝子のアリルが開花時期決定に与える影響を明らかにすることを目的とした。 (1)に関しては、国内外の専門の共同研究者と連携して、開花所要日数のデータセットを何度も改善しながら全ゲノム関連解析を行った。開花制御には複数の経路が存在し、また多数の遺伝子が関わることから、解析は当初困難を極めていた。しかしデータセットに何度も改良を加えたところ、複数の結果を得るに至った。現在、得られた結果を精査し、新たな候補遺伝子を挙げるところである。 (2)については、先に挙げられていた候補のうち、<i>LjE1</i>と<i>LjEMF2</i>の2つの遺伝子に関して、早咲き・遅咲き系統が持つアリルを相互に形質転換し、それぞれのアリルが開花時期制御に及ぼす影響を評価することを試みた。これに取り組むにあたり、共同研究先に2ヶ月間滞在し、専門の共同研究者のご指導のもと、コンストラクトの作成およびアグロバクテリウムを用いての感染・形質転換体作成を行った。野生系統を用いての形質転換体作成は多々難点があったが、現在、形質転換体を同共同研究施設にて生育中であり、本年度に両アリルの形質への影響を評価できる見込みである。 またこれらの他に、計画していた(3)野外調査と、(4)国内外での学会発表において研究成果の発信を行うことができた。 (3)については、特に開花の早い沖縄県宮古島に2回、反対に開花の遅い東北地方の複数の地点に出向き、自然環境下での状態を観察した。 (4)に関しては、国内の5つの学会等でこれまでの研究成果も含めて発表をし、またゲノム学的研究が充実しているヨーロッパ進化学会においても発表し、多数の意見交換を行うことができた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
候補遺伝子の検出を複数の手法で段階的に行ったことと、何より共同研究者等の協力により、候補遺伝子の検出と、形質転換体の作成をほぼ同時進行で行うことができた。 また、野生系統を用いたミヤコグサの形質転換は、実験系統を用いる場合とは異なり、より困難であると予想されていたが、苦戦しつつも予定よりも早く成功したことで、当初の計画以上に順調に研究を遂行できた。 また、予定した野外調査や学会発表等も予定通り行うことができており、全体を鑑みても、本研究は当初の予定通り、またはそれ以上に順調に進行していると思われる。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後の計画としてはまず、全ゲノム関連解析をより深く理解する為に、デンマークの専門の共同研究者の元に滞在し、基本から直接学ぶことを予定している。 野生植物に関しての全ゲノム関連解析は、ヨーロッパで特に発展しており、現地で学ぶことで最先端の手法と環境を経験することができると考えている。滞在中には、全ゲノム関連解析の手法を学ぶ他に、現在幾つか検出されている、ミヤコグサの開花所要日数に関連する結果の精査も行い、成果として学術論文にまとめる予定である。帰国後には全ゲノム関連解析で得られた変異が開花時期決定に与える影響に関しても、平成27年度と同様に行えるように調整を始める予定である。また、環境を変えて新たに形質を計測し、その得られたデータにより全ゲノム解析を行うことで、それぞれの環境での開花所要日数の違いを生む要因を検出することも計画している。 次に、平成27年度に作成した形質転換体に関して、次代の形質と遺伝子型を元に、2つの遺伝子の変異が開花所要日数に与える影響を明らかにする。 これらに加え、継続的に自生地での野外調査を行い、また、得られる新たな成果を学会等で随時発表する予定である。
|
Research Products
(8 results)