2015 Fiscal Year Annual Research Report
ゲノム情報と標本に基づく草原性絶滅危惧蝶類の保全遺伝学的研究
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15J00908
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
中濱 直之 京都大学, 農学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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Keywords | 保全遺伝学 / 草原性絶滅危惧種 / ミトコンドリアDNA / マイクロサテライトマーカー / 標本DNA / コヒョウモンモドキ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、ゲノム情報及び標本DNAから草原性絶滅危惧蝶類であるコヒョウモンモドキにおける長期的(過去1万年間)および短期的(過去数十年間)の個体群動態を復元し、さらに近年の個体群動態に与える環境要因の解明を目的としている。平成27年度は、1)標本の収集及び解析による過去数十年間の遺伝的多様性の変遷の解明、2)ミトコンドリアDNA配列を用いた過去1万年間の集団サイズの変遷の解明の2点を行った。1)では、愛好家及び自然史博物館で所持・収蔵されているコヒョウモンモドキの標本をおよそ1000個体収集した。また、現在も生息が確認されている地域において、130個体程度の野外個体のサンプリングを行った。野外個体については、成虫の後翅の一部のみ採取することで、生存及び繁殖に悪影響が及ばないように配慮した。前年度に次世代シーケンサーを用いて開発したコヒョウモンモドキのマイクロサテライトマーカー9座を用いて、標本及び野外個体の遺伝解析を行った。その結果、解析した9集団のうち8集団において、1980年代から2010年代にかけて遺伝的多様性が減少傾向、または個体群が絶滅していた。 ミトコンドリアDNAについては、日本国内に生息するコヒョウモンモドキの11集団150個体からCOI領域1378bpの配列を明らかにした。コアレセント解析を行った結果、およそ1,000-8,000年前に急激に有効集団サイズが拡大したことが示唆された。日本国内では、火入れや草刈り、放牧などの人為的攪乱の増加により、およそ縄文時代から草原面積が大幅に増加したものの、20世紀後半の高度経済成長期以降、開発や植林、また耕作放棄などにより急速に草原環境が減少した。本研究により、コヒョウモンモドキは生息地である草原面積の増減に合わせて集団サイズが時間的に変化していることが推察された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、本課題における標本の遺伝解析による過去数十年間の遺伝的多様性の時間的変遷の解明、またコアレセント解析を用いた過去1万年間の集団サイズの時間的変遷について解明することができた。また、食草であるクガイソウのマイクロサテライトマーカー開発を行った論文についても出版した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は解析する標本を増やし、各地の集団においてより正確な遺伝的多様性及び構造の変遷について解明する。さらに、草原面積の変化が遺伝的多様性や集団サイズに与える影響について考察を行う予定である。
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