2015 Fiscal Year Annual Research Report
現代メラネシアにおける「世界音楽」の生成過程に関する人類学的研究
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15J01200
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
佐本 英規 筑波大学, 人文社会科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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Keywords | 在来音楽 / ワールドミュージック / 技術 / 身体 / 環境 / 近代性 / グローバル化 / ソロモン諸島 |
Outline of Annual Research Achievements |
報告者は、ソロモン諸島における在来音楽の技術・表象・社会的側面の変化の過程を、オセアニア島嶼部における近代化・グローバル化の地域的展開との関連に着目し、民族誌的に明らかにすることを目的として研究を進めてきた。本研究は、グローバル世界に周縁として包摂されてきた今日のソロモン諸島において、近代性がどのように経験され、そのリアリティがどのように構築されているのかについて、在来音楽の動態を分析することによって捉えることを企図している。こうした本研究は、文化人類学・オセアニア研究・民族音楽学の各領域を横断する学術的意義を有するものである。 各地の在来音楽を対象とする人類学的・民族誌的研究は、従来、研究対象における文化的・社会的同質性を前提とする傾向にあった。しかし近年では、商品化された在来音楽のグローバルな流通・消費のあり方や多文化社会における在来歌謡の混淆性といった、音楽実践の流動的・越境的局面へと射程を拡張している。社会的規範や死生観、環境や歴史をめぐる認識が「身体化」される契機として、在来音楽・舞踏をめぐる情緒的経験をモデル化してきたメラネシア在来音楽の民族誌的研究もまた、近年そうした動向を反映している。 報告者は、こうした研究動向を踏まえ、ソロモン諸島マライタ島アレアレ地域において演奏される在来楽器である竹製パンパイプス・アウを対象として研究を実施し、日本文化人類学会、日本オセアニア学会の研究大会などにおいてその成果を積極的に発表してきた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度にあたり報告者は、現地調査によって得た民族誌資料の整理、文献研究による分析枠組みの構築、具体的なトピックについての分析と考察を進めてきた。その結果、今日のソロモン諸島における在来音楽が、グローバルに展開する観光産業や音楽産業の影響下で、技術的・経済的両側面においてダイナミックな変化を遂げつつあることが明らかになった。そうした成果は、日本文化人類学会第49回研究大会、太平洋諸島学会第3回研究大会などにおいて発表した。国立民族学博物館の共同研究に参加し、2016年5月に開催される国際人類民族科学連合(IUAES)のパネルセッションに話題提供者として登壇することが決まっていることから判断できるように、本研究に対する学界の関心は高い。以上から、本研究は順調に進展していると言って良い。ただし、学会誌等への投稿は一本の書評論文にとどまっており、次年度は積極的な論文の投稿を期する。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度は、民族誌資料の整理、文献渉猟と重要文献の精読を中心とした理論的研究、それらの作業を通して見出された具体的なトピックについての分析と考察を行ってきた。平成28年度は、それらの総括として博士論文の執筆に取り組み、その一部を国内・国際学会での口頭発表、学術雑誌への論文投稿という形で発表する。
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Research Products
(6 results)