2016 Fiscal Year Annual Research Report
刺激応答性多核金属錯体の創製とその集合・包接制御に基づく機能発現
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15J01232
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
内藤 順也 大阪大学, 基礎工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | パラジウム錯体 / ホモキラル会合 / ヘテロキラル会合 |
Outline of Annual Research Achievements |
キラルな洗濯バサミ型パラジウム複核錯体は、リンカーの剛直性が溶液中での会合キラリティに大きな影響を与えることを見出した。本研究で用いた洗濯バサミ型錯体は、リンカーに剛直なメタキシリレン鎖を有する錯体 1 と、柔軟なペンタメチレン鎖を有する錯体 2 である。それぞれの錯体の合成は、対応するジイミン配位子と酢酸パラジウム(II)を反応させることで行った。合成した錯体の構造は単結晶X線構造解析で同定し、2 枚のパラジウム金属配位平面が 2 本のリンカーで連結された、特異な洗濯バサミ型構造をとることを確認した。剛直なリンカーを有する錯体 1 について、ラセミ体および光学活性体それぞれの CDCl3 中における濃度可変 1H NMR スペクトルを解析した結果、錯体 1 が溶液中でヘテロキラル会合に対してホモキラル会合が優先的に誘起されることを見出した。このときホモキラルおよびヘテロキラル会合それぞれの会合定数の比は KD(homo)/KD(hetero) = 120 であった。この結果は柔軟なリンカーを有する錯体 2 のものとは対照的である。錯体 2 は同様の条件下でヘテロキラル会合が優先的に誘起され、このときの会合定数の比は KD(homo)/KD(hetero) = 0.033 であった。 剛直なリンカーを有する錯体 1 と柔軟なリンカーを有する錯体 2 との間で見られた会合キラリティの対照性について、それぞれの錯体の会合様式の差異により定性的に説明することに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、洗濯バサミ型錯体の分子構造と会合挙動に関して新たな知見を得ることができた。具体的には、洗濯バサミ型錯体のリンカーに剛直なメタキシリレン鎖と柔軟なペンタメチレン鎖のいずれかを持つ錯体の溶液中での分子会合挙動を調査した結果、剛直なリンカーを有するものがホモキラル会合を、柔軟なリンカーを有するものがヘテロキラル会合を誘起し、リンカーの剛直性が会合キラリティに大きな影響を与えることを見出した。この結果は査読付きの国際論文に掲載された(Masaya Naito, Naruyoshi Komiya, Takeshi Naota, “Homochiral association of binuclear trans-bis(β-iminoaryloxy)palladium(II) complexes doubly linked with m-xylylene spacers: drastic linker-dependence of the association chirality of chiral clothespin-shaped molecules”, Org. Chem. Front. 2016, 3, 1286-1294.)。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は引き続き、枝分かれ分子配列の達成を目的に、新規3核錯体を合成し、洗濯バサミ型錯体との混合系で超分子形成を試みる。また、サリチルアルジミナト金属配位平面の柔軟性を活かした機能発現を目的に、tripod型錯体、tetrapod型錯体及び角度可変ジャンクション錯体を合成する。合成における検討内容として、tripod型錯体では、内部のキャビティサイズをゲストに合わせて最適化するために、金属配位平面どうしをつなぐスペーサーの種類を検討する。Tetrapod型錯体では、フラーレンを認識捕獲するために、側鎖上から伸びる芳香環部位の種類を検討する。角度可変ジャンクション錯体では、特定の金属配位部位を残したまま金属錯体を形成する必要があり、そのための保護基や反応条件の検討を行う。合成した錯体群に関してその特性解析と機能評価を行う。具体例として、tripod型錯体では、キャビティサイズとゲストの種類との関係、ホスト-ゲストの会合定数、光・電気・超音波等のメカノストレスによる脱離能を、1H NMRスペクトル、UV-vis吸収スペクトル、発光スペクトル等の各種分光法を用いて解析する。Tetrapod型錯体では、光学活性フラーレンのエナンチオ選択的包接能及びメカノストレスによる脱離能を、CDスペクトルや旋光度等の各種分光法を用いて解析する。角度可変ジャンクション錯体では、種々の金属と金属有機構造体を構築し、それらに関して種々のゲスト分子を包接したときの構造変化を各種分光法を用いて解析することで、ゲストの種類とホストの吸着能との相関及び発現する視認変化に関して検討する。
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Research Products
(6 results)