2015 Fiscal Year Annual Research Report
比較考古学からみた初期国家形成―葬送儀礼を中心に―
Project/Area Number |
15J01238
|
Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
BLAJ HRIBAR PETRA 筑波大学, 人文社会科学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
|
Keywords | 比較考古学 / 初期国家形成 / 古墳時代 / ゲルマン系 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は初期国家形成前夜における社会構造を研究対象にし、現代の国家にみられる不平等的な社会構造の起源を明らかにすることを目指しています。初期国家をめぐる比較研究では、論じる試みがこれまでなされてこなかったのが「帝国の周縁」に位置していた初期国家ですが、これらの多くの初期国家は世界的には普遍的な存在であると言え、現代社会のあり方にも強い影響を与えているものです。 目的に沿ったケーススタディとして、古墳時代とゲルマン系の初期国家形成の比較研究を行っています。初期国家形成を考えるうえで、ゲルマン系の社会と古墳時代の社会はいくつかの点で重要な視座を提供しています。両社会を多角的な視点で比較することによって、初期国家形成の普遍的なあり方及び地域的なバリエーションを捉えることができます。 以上の目的を達成するために本年度は、ゲルマン系の埋葬人骨と副葬品の分析を進めました。具体的には、副葬品と被葬者の関係を中心に、副葬品の形式、配置及び数量などの観点から分析を行いました。この分析によって、ゲルマン系社会の中での有力者の位置づけとその社会の特徴について検討しました。 また、日本全国の古墳時代の社会で用いられた副葬品及び埋葬パターンの観察を行いました。上記と同様の分析を行い、古墳時代全体の中での権力者の位置づけとその変化について検討しました。 さらに、スロベニア共和国においてゲルマン系に伴う遺物の観察を行うとともに、考古学の理論及びゲルマン系に関する資料を調査しました。リュブリャーナ大学の図書館で史料調査を行い、ゲルマン系の歴史に関する文献を検討ました。国立博物館の図書館でも必要な文献を収集するとともに、展示されているローマ時代及び中世の遺物も調査し、本研究に必要なデータを得ることができました。副葬品や文献史料に関するデータベースも作成しましたが、これは今後の比較研究の基礎となるものです。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究に計画していた必要な資料調査はおおむね順調に遂行できました。 本年度はスロベニア共和国におけるゲルマン系の資料に関する調査を行いました。当初計画していた資料調査及び文献収集作業をほぼ完了しました。 ゲルマン系社会における遺物の調査も順調に進展し、これらに関するデータベース作成作業も進んでいます。 研究目的を達成するための新たな視点も得られることができました。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究の目的を達成するためには、ゲルマン系だけでなく、日本全国の古墳時代の埋葬人骨と副葬品を分析する必要があります。そこで、平成28年度には古墳時代人骨に伴う副葬品の整理を進め、副葬品と被葬者の関係を中心に、副葬品の形式、配置及び数量などの観点から分析を行います。この分析にもとづいて、古墳時代全体の中での権力者の位置づけとその変化を考察していく予定です。 次に両社会における副葬品から得られた結果を比較します。 平成29年度には、前年度までに行った副葬品の比較研究についてまとめるとともに、自然環境が各社会に与えた影響を評価し、両社会における社会構造の違いをふまえた上で、初期国家の形成過程を考察します。さらに、両社会の特徴とその成因についての議論を組み込みながら、初期国家形成の新たな定義を模索し、本研究がその他の初期国家社会にどのように援用できるのかを検討します。これにより、その社会に特有の環境への適応方法が明らかにし、他の考察結果と合わせながら、初期国家の形成過程及びそれを可能にしたいくつかの重要な要素を明らかにします。これらの考察をふまえ、最終的には、各社会の斉一性と特殊性及びその原因について論じる予定です。
|