2015 Fiscal Year Annual Research Report
磁気特性の不確定性を考慮した電磁界解析法とロバスト設計法の開発
Project/Area Number |
15J01550
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
佐藤 佑樹 北海道大学, 情報科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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Keywords | 非線形を考慮した等価回路 / モデル縮約法 |
Outline of Annual Research Achievements |
製作過程における加工や溶接等のために,磁性材料の磁気特性が変化してしまう.そのため,モータや変圧器等に使用されている磁性材料は,カタログ値と異なった磁気特性を有している可能性がある.磁気材料特性の不確定性が機器におよぼす効果を知るためには,磁気特性を様々に変化させて電磁界解析を行わなければならない.そこで,私は,高精度かつ信頼性・安全性の高い電磁機器を開発するために, (1) 磁性材料の不確定性を考慮した電磁機器解析手法の確立 (2) 磁性材料の不確定性にロバストな電磁機器の設計手法の確立 を目指し研究を行っている.本年度は,(1)の磁性材料の不確定性を考慮した電磁機器解析手法の確立を行っていた. 磁性材料の不確定性を考慮した電磁機器の設計・開発のためには,数千回から数万回の電磁界解析を行う必要があり,高速な電磁機器の電磁界解析手法が必要となる.そこで,私は電磁界解析を高速化する方法として,モデル縮約法(model order reduction)の研究を進めてきた.このモデル縮約法では,有限要素モデルから直接,インピーダンスの有理関数を計算する.この有理関数の計算は有限要素方程式の係数行列の固有値問題に帰着するが,モデル縮約法を用いることで,数十の固有値問題へ帰着させることができる.数十の固有値問題であれば解くことは容易なので,有限要素モデルのインピーダンスの有理関数を計算することができる.その後,本モデル縮約法を用いて,非線形性を考慮した電磁機器の等価回路を求める新しい方法を開発した.本手法により得られる等価回路を用いることにより,磁性材料の不確定性を考慮した電磁機器の設計,開発を高速に行うことができることが期待できる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
磁性材料の不確定性を考慮した電磁機器の設計・開発のために,我々はモデル縮約法と呼ばれる手法を用いて研究を進めてきた.本年度は,この手法を用いて非線形性を考慮した電磁機器の等価回路生成手法を確立した.本法では,有限要素モデルから直接,インピーダンスの有理関数を計算する.この有理関数の計算は有限要素方程式の係数行列の固有値問題に帰着するため,その係数行列の次元数が大きくなればなるほど,計算時間が長大となってしまう.そこで,申請者らはこの計算に先行研究で用いていたモデル縮約法をこの計算に適用した.これにより,有限要素方程式の係数行列の次元数の固有値問題を数十の固有値問題へ帰着させることができる.数十の固有値問題であれば解くことは容易なので,有限要素モデルのインピーダンスの有理関数を計算することができる.その後,その有理関数に対してEuclidの互除法を適用することで,Cauer型の等価回路を生成することができる.また,Cauer型の等価回路では,1段目の抵抗,インダクタは直流抵抗,直流インダクタンスとなる.そのため,この直流インダクタンスが回路全体で支配的であると仮定した場合,この直流インダクタンスに非線形性を付与すればよい.これにより,広周波帯域で使用可能で材料の非線形性を考慮した電磁機器の等価回路を生成することができる. 本手法をDC-DCコンバータ内のインダクタに本手法を適用した.線形素子のみでの回路解析では有限要素解析と一致していないのに対して,提案手法で解析を行った結果は,有限要素解析により求めたDC-DCコンバータの出力電流と一致した.有限要素解析では1時間以上の計算時間がかかるのに対して,回路解析では1秒以内に解析を行うことができている.これらの結果より,本手法は1000倍以上の高速化を実現でき,さらに3次元有限要素解析とほぼ同精度の解析を行うことができる.
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Strategy for Future Research Activity |
磁気特性の不確定性を考慮した設計・開発では,磁気特性を確率的に様々に変化させて電磁界解析を行わなければならないので,計算時間が膨大となる.そこで,今年度は非線形性を考慮した電磁機器の等価回路生成手法を用いて,磁性材料の不確定性を考慮した電磁機器の設計・開発を行う.実際には,等価回路の1段目のインダクタンスは非線形性を持つ素子なので,この部分に磁気特性の不確定性を付与する.1段目のインダクタンス以外の等価回路のパラメータは,電磁機器の幾何構造により決まるので容易に不確定性を考慮した解析を行うことができる.最終的には,モンテカルロ法により,磁気特性の不確定性が電磁機器に与える影響を数値的に評価することが可能になる.磁気特性の不確定性を数値的に評価できることにより,今まで行うことが難しかった磁気特性の不確定性を考慮した電磁機器の設計・開発ができるようになる.
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