2015 Fiscal Year Annual Research Report
不均一系触媒を組み合わせた環境調和型反応の開発ならびに新規触媒合成
Project/Area Number |
15J01556
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Research Institution | Gifu Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
山田 強 岐阜薬科大学, 薬学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | プラチナ炭素 / イソプロパノール / 重水 / 水素ガス用事調製法 / 重水素標識反応 / 芳香核還元反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
H.27年度までの研究実績として以下に示す4つの成果を得た。 1、アルカンの多重重水素化:i-PrOHのPt/C触媒的脱水素反応によりin situで発生した水素ガスを、アルカンのC-H結合に親和性を示すRh/Cの活性化剤とすることで、穏和な条件下での効率的なアルカン重水素標識法を確立し、学術論文として投稿した。 2、脂肪族カルボン酸の重水素標識:10% Pt/C触媒存在下i-PrOHあるいはi-PrOD-d8と重水の混合溶媒中、封管を用いて120 oCで加熱攪拌することで、様々な脂肪族カルボン酸の重水素標識反応が進行することを見出した。生体内必須物質である脂肪酸やバルプロ酸など医薬品を含む幅広い基質に適用できることから、実用性の高い手法であり、現在論文投稿中である。 3、水素ガスの外部添加を必要としない芳香核還元反応:10%Pt/C触媒存在下、i-PrOH/H2O (2/1)混合溶媒中、ステンレス封管中で芳香族化合物を加熱攪拌すると芳香核還元反応が効率よく進行することを見出した。更に、基質一般性を拡充し、水素ガスを外部添加する必要のない安全な芳香核還元として確立できた。そこで、学術論文として報告した。 4、ガラス封管を用いた芳香核還元反応:成果3、の反応をステンレス封管からガラス封管に代えると、反応が全く進行しないことが明らかとなった。そこで様々な金属効果を検討した結果、ステンレス構成成分である0価のFeを加えると、芳香核還元が効率良く進行する興味深い知見を見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
現在、脂肪族カルボン酸の重水素標識法の開発(平成27年度研究計画1-1)は論文投稿中であり、論文投稿をもって研究完了とする。また、ステンレス封管中での水素ガスを外部添加する必要のない安全な芳香核還元法の開発(計画2-1)も論文投稿を達成したことより、研究は完了した。更に、ガラス封管での芳香核還元反応の開発(計画2-2)における現在までの進捗状況として、PtとFeを組み合わせることで最も効率良く芳香核還元反応を促進することを明らかとした。 その一方で、申請者の研究室では塩基性陰イオン交換樹脂WA30をパラジウムの担体とした触媒Pd/WA30を開発している。申請者はWA30を触媒として重水中、末端アルキンとともに攪拌したところ、ほぼ定量的に末端アルキンが重水素標識化されることを見出した。この反応を研究計画と並行して遂行することで、穏和な条件下で進行する末端アルキンの重水素標識化反応として確立し、論文投稿した。 すなわち、申請研究でも順調に進展しているとともに、そこで新たに見出された知見を基に、他の研究においても成果を挙げることが出来ている。
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Strategy for Future Research Activity |
申請時の他の研究テーマとして脂肪族エーテル、アミンおよびアルコールの重水素標識(計画1)を挙げており、現在明らかとなりつつあるPt/C-0価Feを用いた核還元法(計画2)の開発を併せて遂行する。 計画1、脂肪族エーテル、アミンおよびアルコールの重水素標識:計画1で確立したカルボン酸の重水素標識法の最適条件では、10%Pt/C触媒の単独使用が最も効果的であったことから、10%Pt/C触媒を単独使用することで脂肪族エーテル、アミンおよびアルコールの重水素標識法の開発を目指す。脂肪族エーテルの重水素標識に関しては、これまでにエーテルに対して1.1等量の炭酸リチウムの添加が効果的であることを見出しており、10%Pt/Cと炭酸リチウムの組み合わせた条件でも検討し、重水素化率の向上を目指す。 計画2、水素ガスの外部添加を必要としない芳香核還元反応:耐圧ガラス容器中での水素ガスフリー芳香核還元反応において、Pt/Cと0価Fe粉の組み合わせが最も効率良く芳香核還元反応を促進することを明らかとした。更にPt-Feによる核還元反応メカニズム解明を行う。以下に示す手法を基にメカニズムを考察する。(1)ガラス封管中基質を除いた芳香核還元条件でFe添加の有無による水素ガスの発生量と発生速度を比較する。(2)i-PrOHを反応系から除外し、水素源としてH2ガスを添加した条件でFeによる還元反応促進効果を確認する。これらの検討により、Feがi-PrOHから脱水素してH2を発生する段階で作用するのか、その後の還元段階を促進するのかを明確にする。また、基質適用性検討を遂行する。他の計画として触媒を回収・再利用することで、実用性に優れた環境調和型の反応として確立する。
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