2016 Fiscal Year Annual Research Report
分裂期細胞死による、発がん防御機構・生殖細胞の維持機構の解明
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15J01706
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
田上 友貴 熊本大学, 医学教育部, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | Chk2 / Rad18 / 分裂期細胞死 / 生殖細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
1. 細胞老化の誘導における、細胞周期制御・チェックポイントの役割の解明 細胞に紫外線や放射線が照射されるとゲノムDNAに1本鎖DNA領域が形成され、DNAの損傷応答(DDR)を活性化する。DDR経路は、細胞周期の進行を制御する一方で、細胞老化を誘導してゲノムの安定性を保つ。細胞老化は発ガン抑制の役割を担う一方、生体の新陳代謝には不利益に働くという二面性があることより、細胞老化の誘導は厳密に制御されていると考えられる。そこで、損傷の量が少ない場合にはDNA修復や細胞周期制御によりゲノムの安定性が保たれ、細胞老化は誘導されず、損傷の量が多い場合には細胞老化が誘導されるのではないかと仮説をたてた。放射線照射後の細胞で細胞周期制御が起こるか確かめるために細胞周期の解析を行い、subG1(G1期よりDNA量の少ない分画: 細胞死を反映する)、G1/S チェックポイント、G2/Mチェックポイントについて、それぞれの結果を検討した。さらに活性化p53量をウエスタン解析により調べた結果、細胞周期制御(Chk2)とDNA修復(Rad18)の機能を二重に欠損した細胞ではp53が強く活性化されていたことがわかった。以上の結果より、DDR経路はDNAを損傷した細胞がS期からG2/M期に移行しないように細胞周期の進行を抑制するが、これが破綻した場合には、G2/M期でp53が強く活性化して細胞老化を誘導し、ゲノムの安定性を保つモデルを考案した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1. マウスChk2がUV照射による皮膚癌形成を防ぐ機構の解明 CHEK2 1100delC変異をもつヒトは、乳癌およびメラノーマに罹患するリスクが約2倍高くなる。メラノーマの主要な原因はUVの照射である。しかしUV照射したモデル動物を用いて、CHEK2遺伝子機能の欠損が発癌リスクへ影響することを確認した研究は報告されていない。これまでに私は、ヒトCHEK2の相同遺伝子であるマウスChk2遺伝子を欠損したマウスに定期的にUV照射を行うことにより、このマウスが主に有棘細胞癌などの皮膚癌を形成しやすいことを明らかにした。また、野生型、Chk2欠損、Rad18欠損 およびChk2・Rad18欠損マウス由来のES細胞を用いて試験を行った。UV照射後にChk2依存的に誘導されるアポトーシスおよび細胞周期制御が、ゲノムDNAを安定に維持して皮膚癌の形成を防ぐ役割を果たしていることを示唆するデータを得た。以上の結果をまとめて、J. Invest. Dermatol.に投稿する準備をしている。 2. 体細胞超変異(Somatic hyper mutation)におけるRad18の役割の解明 体細胞変異でのRad18の役割を解明するため、Rad18を欠損する細胞を用いて、Rad18とは異なる経路によりPCNAの一部がユビキチン化されることを示した。2017年度のDNA Repair誌に共著として報告した。 3. 分裂期細胞死による、生殖細胞の維持機構の解明 生殖細胞を維持するために分裂期細胞死が果たしている役割を明らかにするため、各マウスそれぞれの受精卵を培養し、胞胚形成での異常の頻度を測定した。加齢した二重欠損マウスの受精卵では異常な卵割が見られた。また各マウス由来のES細胞にGFPヒストンを発現させた後にUV照射を行い、インキュベーター顕微鏡を用いて分裂期細胞死のイメージングを行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで、Rad18、Chk2、p53などを欠損させたマウスを用いて、マウスの発がんについて調べてきた。がん抑制因子として知られるp53を欠損させたマウスは発がん頻度が上昇するが、p53Rad18二重欠損マウスはp53欠損マウスほど発がんしないことが明らかとなった。すでに共同研究にて、Rad18はがんの進行を助けるような働きがあることを報告している。普段はゲノムを安定化させる働きをもつRad18が、発がん状態では、がんを進行させる働きがみられることから、今後は発がん防御と細胞老化・細胞死に着目して研究を進めたい。
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Research Products
(3 results)