2015 Fiscal Year Annual Research Report
ユビキチンカスケードを介した栄養素シグナルによる花成制御メカニズムの解明
Project/Area Number |
15J01802
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
青山 翔紀 北海道大学, 生命科学院, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | C/N栄養応答 / 花成 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,C/N栄養応答による花成制御シグナル伝達経路の解明を目指している。方法としては,網羅的解析によって候補となる因子を探索し,既に知られている花成制御関連因子との関係性を検証していくことで同定を目指した。具体的にはまず,C/Nストレスによってリン酸化状態が変化するタンパク質の網羅的解析(リン酸化プロテオーム)によって,花成において極めて重要なシグナル伝達経路としてよく知られている光周期依存経路の上流で働くbHLH型転写因子を同定した。この転写因子は高C/低Nストレス,特に低Nストレスによく応答し,実際にリン酸化を受けることが確認できた。また,この転写因子によって制御される,光周期依存経路の重要遺伝子であるCO遺伝子,およびそのさらに下流のFT遺伝子の発現も,高C/低Nもしくは単に低Nストレスによって促進されることがわかった。このような光周期依存経路に関わる遺伝子の発現変動は,一過的なC/Nストレス処理を施した場合だけではなく,長期的な水耕栽培を用いた場合にも見られており,水耕栽培では実際に,花成が光周期依存経路に強く依存する長日条件において,高C/低Nや低Nの条件で花成の早期化が確認できた。さらに,CO遺伝子の欠損変異体を用いて同様の解析を行ったところ,下流のFTの発現量の増加や,花成の早期化は見られなくなった。これらのことから,C/N栄養シグナルがbHLH型転写因子のリン酸化状態の変化を介して,光周期依存経路を促進することによって早期の花成を誘導していることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
C/N栄養応答による花成制御の分子基盤は全く未知であったが,本研究ではその制御に重要な因子の有力候補を同定し,下流の遺伝子群の変動や表現型解析からもこれを支持する結果が得られたため。
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Strategy for Future Research Activity |
C/N栄養応答による花成には本研究で同定したbHLH型転写因子のリン酸化が発端となる可能性が示唆された。今後は,まずこのリン酸化が実際シグナル伝達において重要であることを実験的に示したい。これには,この転写因子を過剰発現させた植物体を用いた質量分析によるリン酸化部位の特定,および特定したリン酸化部位に変異をいれたタンパクを利用した一過的発現系を用いてその挙動を検証する。 さらに,bHLH型転写因子リン酸化の上流のシグナルについて検証する。このリン酸化はC/N栄養バランス依存的であるため,C/Nによって活性が変動するタンパクキナーゼの存在が推測される。これを明らかにするため,質量解析等を用いて相互作用するタンパクキナーゼの同定を目指す。タンパクキナーゼの同定に成功したら,そのキナーゼの活性を制御するシグナルとなる鍵代謝物を,変異体を利用した解析やC/N応答時の代謝物測定の結果を融合して探索する。
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Research Products
(2 results)