2015 Fiscal Year Annual Research Report
コヒーレントX線回折イメージングによるソフトマター空間階層構造可視化技術の開発
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15J01831
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
小林 周 慶應義塾大学, 理工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | コヒーレントX線回折イメージング / 細胞イメージング |
Outline of Annual Research Achievements |
コヒーレントX線回折イメージング(CXDI)はサブミクロンサイズの非結晶試料に高空間可干渉X線を入射し得られる回折強度パターンより電子密度分布を可視化する手法である。本年度は、CXDI実験における大量データ計測技術の開発に重きを置いて研究に従事してきた。この課題に関して以下の2点の成果を報告する。 1. 試料固定照射装置の開発 X線自由電子レーザー施設SACLAにおけるCXDI実験ではX線パルス1ショットで試料が破壊される。そのため、試料粒子を多数散布した薄膜をパルスサイクルに同期して並進させることでパルス毎に照射野を更新している。昨年度から導入した試料固定照射装置には、SACLAで供給される30 Hzの高速パルスサイクルに追随できるように薄膜並進用高速ステージが備わっているが、これを効率よく制御するシステムが未開発であった。そこで、プログラミング言語LabVIEWを軸とする制御ソフトウェアを独自に作成し、簡単に測定ができるようグラフィカルユーザーインターフェースを整備した。 2. 試料散布薄膜の大面積化 試料が散布される薄膜の面積が大きければ、試料交換の時間が省かれ、30 Hzのパルスサイクルを途切れることなく使用することができる。しかし、大面積にするとその分薄膜の強度が落ち、少々の衝撃で破れてしまうリスクもあった。そこで、薄膜の素材を機械的強度の高い窒化珪素とし、これを支えるフレームを強度保持に特化した形状とすることで従来の薄膜の36倍の面積拡大に成功した。 以上2点の成果により、60時間あたりに30万枚以上の回折強度パターンを計測することが可能となった。これは、昨年度の35倍の測定データ量に相当する。次年度は大量データ計測技術を利用して様々な細胞試料の三次元構造イメージングが可能になると期待されている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度、開発した大量データ計測技術により、2回のビームタイムで100万枚以上の回折強度パターンを収集することができた。そのために十分に信頼のできる統計値を得ることが可能となった。例えば、試料はX線パルス1ショットで破壊されるため、回復される二次元電子密度像の配向情報は未知であるが、膨大量の電子密度像と照らし合わせることで情報が補完され、三次元再構築が可能となる。現在解析中ではあるが葉緑体の祖先生物であるシアノバクテリアの三次元構造を回復することに成功した。 さらに、研究実績の概要には記載していないが、SPring-8でのCXDIの試験的実験を行い、装置の制御システムやX線光源のアラインメント方法の開発にも着手した。SACLAでのCXDIは破壊実験であるのに対して、SPring-8では試料を非破壊で測定できる。放射線損傷の影響を考慮しなければならないが、試料を回転させることで配向情報既知の電子密度像を得ることが可能である。統計量は小さいが三次元構造の可視化は容易であると期待されている。 以上の2点は次年度の計画に先駆けた解析であることから、当初の計画以上に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
1. SACLAにおいて大量のX線パルスを使用することが可能となったが、試料にヒットしなければ回折強度パターンは得られない。現在のところ、ランダムに薄膜に散布した試料に対して当てずっぽうでパルス照射しているため、数%のヒット率に留まっている。そのため、X線パルス供給効率を落とさずに試料に対して照準を定め、ヒット率を向上する手法を考案している。
2. 膨大量の二次元電子密度像から三次元再構築を行うアルゴリズムを採用しているが、このアルゴリズムを適用するには「全ての二次元電子密度像が共通の三次元構造から投影されたものである」ということが前提条件として成立していなければならない。本研究でターゲットする試料は細胞や細胞小器官であるため、構造の多様性を考慮しなければならない。例えば、細胞周期ごとの核酸の局在変化が挙げられる。第一の対策として、生理学的に細胞周期を制御し、散布試料がほぼ全て同じ周期となるよう同調させる。第二に、統計的解析を用いて膨大量の電子密度像を周期ごとに選別する方法を考案している。
3. SPring-8にて、試料を回転し各配向ごとに回折データを測定することで三次元構造を可視化するCXDIトモグラフィー実験を実施する。今年度、試験的実験を行ったが、装置の設計上どうしても測定できない配向が存在することが判明した。装置の運用方法を見直すと共に、多少配向情報が欠損していても三次元構造の回復が可能となるアルゴリズムを実装する予定である。
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Research Products
(9 results)
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[Journal Article] Cryogenic coherent x-ray diffraction imaging for biological non-crystalline particles using the KOTOBUKI-1 diffraction apparatus at SACLA2015
Author(s)
T. Oroguchi, Y. Sekiguchi, A. Kobayashi, Y. Masaki, A. Fukuda, S. Hashimoto, M. Nakasako, Y. Ichikawa, H. Kurumizaka, M. Shimizu, Y. Inui, S. Matsunaga, T. Kato, K. Namba, K. Yamaguchi, K. Kuwata, H. Kameda, N. Fukui, Y. Kawata, T. Kameshima, Y. Takayama, K. Yonekura, and M. Yamamoto
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Journal Title
J. Phys. B
Volume: 48
Pages: -
DOI
Peer Reviewed / Acknowledgement Compliant
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[Presentation] クライオ試料固定照射装置「高砂六号」による生体非結晶試料の高効率低温コヒーレントX線回折イメージング実験2016
Author(s)
小林周, 関口優希, 岡島公司, 苙口友隆, 中迫雅由, 橋本早紀, 福田朝陽, 大出真央, 真崎悠, 高山裕貴, 山本雅貴
Organizer
第29回放射光学会年会・放射光科学合同シンポジウム
Place of Presentation
東京大学柏の葉キャンパス駅前サテライト(千葉・柏)
Year and Date
2016-01-10
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[Presentation] Cryogenic coherent X-ray diffraction imaging of cellar organelles by using XFEL2015
Author(s)
Y. Sekiguchi, A. Kobayashi, T. Oroguchi, M. Nakasako, Y. Takayama, M. Yamamoto, Y. Inui, S. Mastunaga, Y. Ichikawa, H. Kurumizaka, M. Shimizu
Organizer
第53回日本生物物理学会年会
Place of Presentation
金沢大学 角間キャンパス(石川県・金沢)
Year and Date
2015-09-14
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