2015 Fiscal Year Annual Research Report
細胞競合において分裂速度の差を検知する細胞間相互作用の実態:数理解析と実験的検証
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15J01837
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
坪井 有寿 大阪大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | 細胞競合 / 数理モデル / cell vertex model / ショウジョウバエ / 力 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、多細胞組織の力学研究でよく用いられる数理モデルの一つ、cell vertex model (CVM )とショウジョウバエ実験を用いて、細胞競合の時空間変化を調べ、その成果を学会、及び学術雑誌で発表した。以下に、具体的な研究成果を記す。 1. クローンと細胞の形の定量化:数理モデルと実験の両結果について、クローンと細胞の形を定量化し、比較した。実験データは、京都大学の井垣らとの共同研究で画像データ(Hippo経路変異クローンをショウジョウバエ翅原基へ誘導したもの)を取得し、申請者が定量化を行った。その結果、数理モデルと実験の結果が定性的に一致したことから、数理モデルの妥当性が検証された。 2. 境界の異常を調節する力学的な性質の解明:分裂速度の差がある状況下で、細胞の張力や圧力に関する力学パラメータを変え、クローンの丸みや異常細胞の出現が調節される条件を探索した。その条件として、クローン間での圧力パラメータの違い、及びクローン境界面での張力パラメータの違いが関与することを見出した。 3. 細胞競合過程において、アポトーシスが果たす役割の解明:細胞死を導入したCVMの構築を行った。細胞死後の力学的変形の時間変化をCVMにより解析し、勝者細胞の選択的な代償性成長に与える影響を調べた。その結果、分裂速度が異なるだけでクローン境界にストレスが非対称に生じ、アポトーシス後の周りの細胞の頂端面の面積成長が非対称になることを、数理モデルから見出した。 4. 化学場融合型CVMの構築:CVMへ反応拡散方程式を導入した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
数理モデルでの予測とショウジョウバエ実験での検証を統合し解析することで、細胞競合過程を高精度で予測することに成功しつつある。交付申請書に記載した研究実施計画通りに研究が進んでいるため、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度に見出した「死ぬ細胞に接した増殖の速い細胞のみが選択的に拡大して失われた領域を埋める」という理論的予測を実験的に検証する。具体的には、ショウジョウバエ実験を用いて細胞競合過程をライブイメージングし、死ぬ細胞の周りの細胞の経時変化を取得する。また、本年度に構築した化学場融合型CVMに、シグナル分子と力学が相互に調節し合うネットワークを導入し、各細胞が化学場情報と力学場情報を統合した上でその振る舞いを決定するモデルの構築を行うことで、代償性増殖における力とシグナル分子の相互調節ロジックを明らかにする予定である。
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Research Products
(9 results)