2015 Fiscal Year Annual Research Report
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15J01952
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
阿部 隆博 北海道大学, 理学院, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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Keywords | 氷河サージ / 冬期加速 / 合成開口レーダー / 衛星画像解析 / 氷河水理モデル / 数値実験 / 国際情報交換 / スイス |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は, 本研究の先駆けとなった「サージ型氷河の静穏期における冬期加速」の論文がThe Cryosphere (TC)に出版された(Abe and Furuya, 2015). 衛星データ解析については, 2014年5月に打ち上げられたALOS-2のSARデータ解析を始めた. ALOSのデータ(2006-2011)と比較するとKlutlan, Walsh氷河で新たな氷河サージを発見した. また, Landsat衛星の光学画像解析にも取り組み, Steele氷河でもサージが発生していた. この3つの氷河サージは現在も継続中であり, 今後もデータ解析を続けていく. Donjek氷河では最近40年間において12年周期でサージが発生していたことを発見し, その発生メカニズムに谷地形が関連していることを示唆した. この内容を論文にまとめ, TCに投稿し, The Cryosphere Discussions (TCD)として出版された (Abe et al., 2015). 現在はTCでの出版に向けて改訂中である. 以上の成果を国内外の学会で発表し, 秋の2つの講演会 (雪氷学会, 測地学会)では学生優秀発表賞を受賞した. また, 冬期における氷河底面環境を調べるために, 氷河水理モデルを使った数値実験に着手した. 2015年10月より, JSPS日本―スイス若手研究者交流事業の支援を受けて, スイス連邦工科大学チューリッヒ校に滞在し, 氷河水理モデルGlaDS (Werder et al., 2013)を用いた数値実験を行った. GlaDSの標準設定では, 夏季の融解水流入の大きさやその期間を変えても冬期は高い有効水圧となったが, 上流部に少量の水を冬期のみ流入させると有効水圧が下がることが判明した. この結果は冬期加速には氷河内の融解水が不可欠であることを示唆している.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度はこれまでに用いてきた合成開口レーダーのデータに加え, 光学衛星画像も使用したことで, 長期間の時空間変動を捉えることに成功した. また, 新たな氷河サージを複数見つけることができた. 氷河水理モデルを使った実験も順調に進んでいる. 以上の点から, 進捗状況はおおむね順調に進展していると言える.
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は当初の予定通り, 衛星データ解析と氷河水理モデルによる数値実験を並行して行う. 衛星データ解析については, 2016年1月現在で氷河サージ中であるKlutlan, Steele, Walsh氷河の時空間変動を明らかにする.数値実験については, パラメータ調整の試行錯誤に加え, 計算された有効圧力から氷河表面速度への変換を実装していきたい.
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Research Products
(14 results)