2016 Fiscal Year Annual Research Report
現代アメリカ学力政策にみる伸長度評価の可能性―「正義」と「排除」の相克から―
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15J01975
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
西野 倫世 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | Value-Added Assessment / アメリカ教育改革 / 学力テスト / 「教える側」の貢献度 / 社会経済的要素 / 学校改善 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度の研究実績の概要は以下の通りである。 ■渡米調査■11月10日~16日,米国NY市およびワシントンD.C.にて本研究の実地調査を行った。NY市では,保護者の学校参加支援に従事してきたNPO職員およびニューヨーク市立大学教授に面会し,NYの教育行政や教員評価制度の展開状況と全米での「教育上の正義」を求める教育運動に関して理解を深めた。ワシントンD.C.では,①学区教育委員会事務局,②学校現場,③教員組合,④連邦教育省に所属する人物にインタビューを行い,それぞれの立場から本研究について示唆を得た。第一に,急進的な教員評価制度として著名なIMPACT制度の変容について,同制度担当官に面会し,同学区の実情と教員評価制度に関する学区教育委員会事務局の認識を知ることができた。第二に,連邦政府の急進的教育政策であるNCLB法の「再建指定校」を受け教職員入替を経験した同市立小学校・校長と面会し,教員評価制度と学校経営の連動についてインタビューを行った。第三に,アメリカ教員連盟本部を訪問し,米国教育政策の展開動向と教員評価への同連盟の対応状況について教育問題担当上級参事にインタビューを行った。第四に,米国の教育事情について連邦教育省の政策分析官にインタビューを行った。 ■論文掲載■本研究の成果を研究論文にまとめ,全国学会1報と同大学コース紀要1報に投稿・掲載された。 ■学会発表■日々の研究成果を学会で報告し,1回報告する機会を得た。 ■論文投稿■上記学会発表の成果を研究論文にまとめ,3月に全国学会に投稿した。 ■学会参加・入会■積極的に関連学会に参加し,資料収集や研究者との交流を通して,本研究を深めるよう心掛けた(日本教育学会,日本教育行政学会,日本教育経営学会,アメリカ教育史研究会,関西教育行政学会等)。加えて,さらに研究の幅を広げるため教育方法学会と教育目標・評価学会に入会した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
採用2年目も熱心に研究に取り組み,渡米調査1回,学会報告1回,論文発表2報という成果を収めた。とりわけ論文発表については,本研究員が活動母体とする学的権威の高い学会において自由研究論文(投稿査読論文)として,きわめて低い掲載確率のなかでの採択に至ったものであり,顕著な成果をあげることができた。査読者の評価も一様に高く,現地調査のオリジナリティや,実践的有用性の高さやわが国への示唆に富む点のみならず,課題設定の社会的意義まで非常に良好なコメントを得ている。また,既に別の全国学会へも査読論文を投稿しており,2年目の研究活動としては十分な努力と成果を上げることに成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度の研究方策としては,主に次の2点に注力する予定である。 第一に,これまでの渡米調査を比較分析する。既に米調査を実施したテネシー州とワシントンD.C.の調査結果を比較分析を行い,必要に応じて追跡調査を行う。 第二に,本研究の成果を博士論文にまとめ,学会発表も行う。以上の作業を通して米国の学力政策にみる“正義”と“排除”の相克をつかむことで,本研究の中軸に位置づくValue-Added Assessmentの可能性を明らかにする。
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Research Products
(3 results)