2015 Fiscal Year Annual Research Report
仲介者取引と直接取引の共存状態を生むトレーダーの特性 ―経済実験による検証―
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15J01981
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
藤倉 崇晃 筑波大学, システム情報工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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Keywords | 仲介者 / 経済実験 / マーケットマイクロストラクチャー / 最後通牒ゲーム / リスク回避 |
Outline of Annual Research Achievements |
H27.9までの期間は文献調査にあてた。H27.11までの期間は、H27.11の学位論文の中間審査に向け、前年度に出版された論文の内容を精査しつつ、より発展的な分析をおこなった。H27.12は、経済実験を筑波大学と関西大学にて執りおこなった。 H28.3までの期間は、数理社会学会での報告に向け、実験結果(データ)の分析と論文化をおこなった。H28.3.17に上智大学四ツ谷キャンパスにて開催された数理社会学会にて口頭報告した。題目は「仲介者取引と直接取引の選択に関する実験的検証」である。
より詳細な内容を以下に記す。直接取引には不確実性があり、それを回避する手段として仲介者取引が行われる。そのような事例証拠は多いが実験的に検証した文献は非常に少なかった。本研究課題は、その実験的検証に取り組んだ。直接取引は同時手番のDictator Gameを参考にデザインした。仲介者取引はGehrig(1993)の理論モデルを参考にデザインした。上記の通り、関西大学と筑波大学で執り行い、被験者は大学生(院生)156名だった。実験の結果として、認知能力の高くかつリスク回避的な被験者は仲介者取引を選びやすいことがわかった。認知能力が低かったり、リスク回避的でなかったりした被験者はあまり仲介者取引を選ばなかった。結論として、ある主体が仲介者取引を選ぶかどうかは、彼の認知能力とリスク回避傾向の影響を受けると論じられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
特別研究員自身が応用経済学会誌に2014年に出版した論文の内容を受けて、取引主体の限定合理性と社会集団の異質性が仲介者市場に果たす役割について、発展的な研究を行っている。 具体的には、12月5日、12月9日に筑波大学、12月17日、12月18日に関西大学にて、それぞれ80人規模の被験者実験を実施している。 また、実験の成果をまとめたものを3月17日上智大学四谷キャンパスの応用数理学会にて発表し、出席者と今後の方針について議論を行っている。 研究の進捗は順調であると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
仲介者には、経済厚生(社会的便益)を改善させる善玉と、悪化させる悪玉が存在する。これまでの研究では善玉に類別される仲介者をテーマにしてきたが、今後は悪玉に類別される仲介者もテーマにする。 たとえば汚職や賄賂を仲介する仲介者は悪玉であり、彼が社会に存在することで社会的便益は悪化する。そこで悪玉仲介者を頼りやすい人の特徴を分析し、汚職や賄賂の発生を抑止する施策をつくるうえで重要な知見を得ようと計画している。
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