2015 Fiscal Year Annual Research Report
新たながん治療戦略のための新規腫瘍内マクロファージの同定
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15J02021
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
椿 卓也 東京工業大学, 生命理工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | 腫瘍組織内における生存期間 / がん細胞増殖促進因子 / 免疫細胞の走化性因子 / T細胞抑制 |
Outline of Annual Research Achievements |
TAM-Xをがん細胞と混合してマウスの皮下に移植して腫瘍の成長を経時的に観察したところ、移植8日後という初期および20日後という後期において、がん細胞のみを移植した腫瘍に比べて有意な腫瘍増殖促進効果が確認されたことから、TAM-Xは少なくとも2つの異なる腫瘍増殖促進作用を有することが示唆された。 続いて、TAM-Xの腫瘍組織内における生存期間を調査したところ、移植8日後には存在したものの、20日後には消失していた。つまり、早期の腫瘍増殖促進はTAM-Xの直接的がん細胞増殖促進機能による可能性が高く、後期の腫瘍増殖促進は腫瘍組織内でがん細胞が増殖し易い環境を整えたことによる間接的な影響であると示唆された。 そこで、がん細胞とTAM-Xのみを共培養したところ、がん細胞を単独で培養した条件に比べて有意に高い腫瘍増殖促進効果が確認されたことから、TAM-Xは直接的にがん細胞の増殖を促進する機能を有することがわかった。また、この共培養した際の培養液中に含まれるサイトカインをサイトカインアレイで網羅的に解析したところ、がん細胞のみを培養した培養液中に比べて4種のサイトカインが2倍以上多かったことから、これらによってがん細胞の増殖を直接促進していることが示唆された。 さらに、がん細胞とTAM-Xを共培養した培養液中のサイトカインアレイの結果、がん細胞のみを培養した培養液中に比べて4種の走化性因子が1.75倍以上多かった。これらは、TAM前駆細胞である単球とMO-MDSC、そしてPMN-MDSCの誘引を促すことが知られていることを踏まえ、TAM-Xは、腫瘍悪性化能を有する免疫細胞(TAMやMDSC)を腫瘍組織内へ誘引することで、間接的に腫瘍悪性化を促進するという仮説を立てた。これを検証するために、がん細胞とTAM-Xを共移植した腫瘍組織内には、がん細胞を単独で移植した腫瘍に比べてTAMおよびMDSCが顕著に増加していた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度内に予定していた実験は、いくらかの失敗ややり直しがあったものの、最終的にはどれも一定の結果が得られた。来年度はこれらの結果を踏まえて立てた仮説を、より詳細に検証していきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の実験結果から得られたいくつかの仮説(4種のサイトカインによる直接的ながん細胞増殖促進作用、4種の走化性因子による腫瘍抑制免疫細胞の誘引、T細胞の不活性化)を検証するための実験を行い、現在考えている仮説通りの機構によって、TAM-Xが本当に腫瘍悪性化を促しているかどうかを調査していく。
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