2015 Fiscal Year Annual Research Report
呼吸鎖複合体-Iの1分子計測を目指したプローブ分子の創製と特異的化学修飾法の確立
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15J02243
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
桝谷 貴洋 京都大学, 農学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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Keywords | ミトコンドリア / 複合体-I / トシル化学 |
Outline of Annual Research Achievements |
申請書の年次計画に基づき、複合体-Iのユビキノン結合ポケットを特異的にアジド化することを目的として、アセトゲニンリガンドAP-2を合成した。AP-2とウシ心筋亜ミトコンドリア粒子(SMP)を37℃でインキュベートしたところ、複合体-Iのユビキノン結合ポケットの最深部を構成する49 kDaサブユニットのAsp160が位置特異的にアジド化されることがわかった。次に、アジド化されたAsp160(Asp160-N3)を有する複合体-Iを含むSMPを、蛍光基TAMRAを持ち反応性に富む歪んだ環状アルキン(TAMRA-DIBO)とインキュベートし、その反応性について評価を行った。好熱細菌複合体-IのX線結晶構造を参照すると、基質であるユビキノン結合部位は、内径8Å、奥行き30Åの狭い洞窟様の構造をとることが報告されており、本来ならば嵩高いTAMRA-DIBOがAsp160-N3と反応することは困難なはずである。ところが、予想に反してTAMRA-DIBOはインタクトな複合体-IのAsp160-N3と直接反応することがわかった。本研究成果は、ユビキノン結合部位は結晶構造から想定されるものよりも、はるかに柔軟性に富んだ構造を取ることを示唆するものである。以上の成果をアメリカ化学会Biochemistry誌で報告した。
これと並行して、ユビキノンをモチーフとしたトシルリガンド分子(QT)を合成し、複合体-Iに対する修飾実験やQT自身の複合体-Iに対する基質活性の評価を行った。QTはAP-2と同様、49 kDaサブユニットのAsp160を特異的に化学修飾した。一方、電子受容体としてのQTの活性を評価したところ、複合体-Iにおける人工ユビキノンQTの還元はプロトン輸送と共役しないことを発見した。QTは、基質の酸化還元と共役した複合体-Iのプロトン輸送のメカニズムを考察するための重要なツールとなることが期待され、系統的に合成した一連のQT類の作用機構について明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
アジド基を有する新たなトシル化学用のリガンド分子AP-2を合成し、複合体-Iのユビキノン結合ポケットの最深部を構成する49 kDaサブユニットのAsp160を特異的にアジド化することに成功した。また、アジド化されたAsp160は、嵩高い蛍光発色団TAMRAを持ち反応性に富んだ環状アルキン(TAMRA-DIBO)とクリックケミストリーによって直接反応することを明らかにした。このことから、ユビキノン結合ポケットは結晶構造から予想されるものよりもはるかに柔軟性に富んだ構造変化を取ることが明らかになった。以上のように、研究は当初の計画以上に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は、好熱細菌(Thermus thermophilus)複合体-Iを位置特異的に化学修飾するリガンド分子の創製について研究を進める予定である。
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Research Products
(4 results)