2015 Fiscal Year Annual Research Report
化学動力学進化の解析に基づく銀河系円盤形成過程への制限
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15J02450
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
豊内 大輔 東北大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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Keywords | 円盤銀河 / 化学進化 / 構造進化 / ガス流入 / ガス流出 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は我々人類が住む天の川銀河(銀河系)の円盤構造について、その形成過程で重要だと考えられる銀河外部からのガス流入(いつどのくらいの質量が円盤上のどこに降り積もるかの情報)とradial flow(降着後の円盤内におけるガスの移動)の時間進化を明らかにすることである。これを達成するために前年度は準解析的手法に基づく銀河円盤進化モデルを用いて、銀河系自身や遠方に存在する銀河系の先祖と呼べるような銀河で観測される構造的進化と化学的進化に関して包括的な議論を行なった。
モデル計算の結果、観測を説明するためにはガス流入だけでなく銀河内部でのフィードバック過程に起因する銀河外部へのガス流出過程が必要不可欠であることが分かった。銀河進化におけるガス流入とガス流出の寄与はradial flowに比べると大きいため、少なくとも銀河形成初期においてはradial flowは重要でないことも判明した。さらに計算結果の詳しい解析を通してガス流入とガス流出では星形成に対する依存性が大きく異なることも明らかとなった。この結果は従来の銀河進化モデルにおける作業仮説の不当性を示唆する重要なものである。ガス流入とガス流出の星形成に対する依存性はその駆動源となる物理過程の性質に大きく依存するため、本研究によって銀河形成に関わるいくつかの重要な物理過程についてこれまでにないアプローチで制限を与えることができたと言える。
これらの結果はすでに論文としてまとめ学術誌"The Astrophysical Journal"に掲載されており、国内外のいくつかの研究会でも発表済みである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画1年目に作成する予定だった化学進化モデルも無事完成し、予定通り銀河系におけるガス流入とradial flowについて議論することができた。それに加えてガス流出の存在についても示唆することができ、当初の想定以上の研究成果を得ることができた。計画通り論文の執筆、国内外の研究会での発表も達成することができている。2年目の研究計画にはまだ十分に取りかかれていないのが現状だが、1年目に行う予定だったことはすべて達成できているため、ここまではおおむね順調に進展していると言えると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
2年目の研究計画にあるように最新の銀河系内大規模サーベイの一つであるAPOGEEの観測データの解析に着手する。APOGEEからはこれまでにない大量の銀河系円盤星について正確な位置、アバンダンス、視線速度の情報を得ることができる。これらの情報とこれまで行ってきた化学進化モデルの計算結果を組み合わせ、先行研究では議論することができなかった銀河系円盤星の力学進化(速度分散の進化、円盤星の円盤面に沿った方向の移動など)について独自のアプローチで迫る。
円盤星の力学進化には銀河同士の合体過程や円盤中のスパイラル構造の生成過程など非常に複雑な物理過程が関与すると考えられている。そのため上述のような手順で示した銀河系円盤星の力学進化を正しく理解する上で銀河形成シミュレーションの結果と比較することが重要となる。そこでAPOGEEのデータ解析がまとまり次第、銀河系についての形成シミュレーションを行うことのできる他の研究者に研究協力を依頼する予定である。
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Research Products
(5 results)