2015 Fiscal Year Annual Research Report
津波石の磁化を利用した環太平洋域の津波規模・周期の地質学的決定
Project/Area Number |
15J02522
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
佐藤 哲郎 東北大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | 津波 / 巨礫 / 年代推定 / 磁気記録 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、過去の津波により移動した巨礫の移動年代を、岩石が記録する磁気から明らかにすることである。これまでの研究では、巨礫に付着する貝殻やサンゴの生物遺骸の放射性炭素を用いて津波の発生年代を決定してきた。しかし、放射性炭素年代は巨礫が陸上に打ち上げられ、海生生物が遺骸となった年代は推定できるものの、上陸後に再度津波を経験した場合の年代は推定できない。この問題を解決するため、巨礫に含まれる磁性粒子が地磁気の方向を記録することと移動後に新たな方向の磁気を獲得することを利用する。新たに獲得された磁気は時間経過とともに増加するため、増加量を分析することで移動年代がわかる。 本年度は研究に使用する巨礫試料の採取をトンガ王国、大分県別府湾で行った。トンガの巨礫は12万年前の火山の山体崩壊による津波で移動したと考えられているが、その後の移動に関しては不明のままである。磁気分析の結果、いくつかの試料から移動の痕跡を観測することができた。大分県別府湾の巨礫は、砂岩を起源としているため、放射性炭素を利用した年代測定が難しく、その移動プロセスと年代については不明である。一方、別府湾には中央構造線の末端部に発達する正断層型が発達していて、これらの正断層の活動によって津波が発生することが指摘されている。しかし、津波の再来周期やどの程度の津波が発生するのか、これまで全く物証がなかった。この問題を克服し、移動年代を推定することで、過去の津波または高波などのイベントが復元可能になる。磁気分析によると、複数の試料で移動後に獲得された磁気を有していることがわかってきている。 また、従来の磁気を利用した年代推定は実際の年代よりも古い年代を算出することが指摘されてきた。この問題を解決し、年代推定精度の向上を図るため、理論を拡張することを行い、精度の高い年代を推定できる手法を開発した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、トンガ王国の巨礫の採取を行うことができただけでなく、大分県別府湾の巨礫の採取も行った。これらの試料を用いた分析を進捗させることができ、おおむねよい結果が得られている。また、年代推定精度の向上のため理論を見直し、高精度の年代推定法を開発できた。今年度の成果については投稿論文にまとめ、国際誌への投稿準備中である。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画に沿って野外調査を実施するとともに、これまでの調査で得られた試料の磁気分析を進める。磁気記録を用いた年代推定の精度向上に関しては、様々な岩石の磁気を用いた検証実験を行う必要がある。得られたデータについて学会発表、公表論文としてまとめる。今後も研究計画に沿って研究を推進していく。
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Research Products
(3 results)