2016 Fiscal Year Annual Research Report
Investigation into cell heterogeneity using ultra-fast imaging technique
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15J02613
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小林 博文 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | 薬剤耐性 / 画像処理 / 機械学習 / 高速イメージング / ラベルフリー |
Outline of Annual Research Achievements |
がん細胞が抗がん剤に対して耐性を獲得すると、これまで効果のあった抗がん剤でも効果がなくなる。薬剤耐性がん細胞を見つけるには、まず薬剤耐性と関連のある分子マーカーを同定する必要があり、簡単には見つけることができない。本年度の研究では、薬剤とがん細胞の形態学的変化を、無標識画像を使って識別する技術を応用することで、分子マーカーに頼らず、薬剤耐性がん細胞と薬剤感受性細胞を無標識画像のみによって識別することを目標とした。 前年度での成果に基づき、本年度はより臨床応用を意識した応用研究を行った。具体的には、薬剤感受性がん細胞のみ抗がん剤によって形態学的変化を起こし、薬剤耐性を持つがん細胞は形態学的変化を起こさないと仮定し、これを高速イメージング技術と画像処理及び機械学習を用いて検証した。本研究では、ヒト白血病細胞のK562とその薬剤耐性株であるK562/ADMを抗がん剤であるAdriamycinで処理し、研究員の所属する合田研究室で開発されたOptofluidic Time-stretch Microscopyを用いて細胞の写真を撮影した。本装置はイメージングフローサイトメーターと同じく、マイクロ流路内を流れている細胞を撮影する。その後画像処理と機械学習を経て、薬剤耐性細胞であるか否かをコンピュータに自動判定させた。その結果、15.8 nMの薬剤を添加した場合、薬剤耐性株のがん細胞を正しく識別できた確率が96.9%となり、薬剤を添加していない群(正解率82.6%)と比べると15%も上昇した。薬剤感受性細胞K562が当薬剤ADMで50%死滅する濃度を示すIC50が237 nMであることを考慮すると、がん細胞を殺さない非常に低い薬剤濃度でも薬剤感受性と薬剤耐性のがん細胞を識別できたと言える。この結果は、今後臨床応用を考える際に非常に有望な結果である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は臨床応用を意識した、薬剤耐性モデルにおいても、本研究で開発した技術が適用できることを示せたことで計画通りに進んでいると判断した。薬剤で細胞の形態学的変化を誘導し、細胞の薬剤に対する感受性の違いからどの細胞であるかを判断するという非常に単純な理論であるが、形態学的変化を観察する対象がラベルフリー画像であることと、薬剤耐性がん細胞と薬剤感受性がん細胞の(薬剤添加後であっても)見た目が非常に似ていることから、区別が困難になると予想されていた。しかし、結果は予想以上に良好で、がん細胞を死滅させるよりもかなり低い濃度の添加であっても、両種類の細胞を96.9%もの高い精度で識別できたのは、大きな進捗であったと言える。これは更には、本技術が多様な場面に応用できうる可能性を示しているとも言える。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は更に複雑な薬剤耐性を持つ肺がん細胞をモデルに、本研究の応用範囲を広げていきたいと考えている。肺がんモデルではこれまで使用した抗がん剤とは違い、分子標的薬を使う予定である。これでも細胞ごとの形態学的変化を高い精度で識別できるならば、薬剤が細胞に与えている影響を分子レベルで観察できたことになる。一般的に、ラベルフリーの透過画像のみから分子レベルの情報を細胞から引き出せる技術は存在しないため、非常に挑戦的な研究であるとともに、成功すれば非常に興味深い研究となる。
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Research Products
(7 results)