2015 Fiscal Year Annual Research Report
多階層モデルによる統合爆縮コードの開発と高速点火実証実験の提案
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15J02622
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
白戸 高志 東北大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | 慣性核融合 / 多階層モデル / 数値流体力学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は相対論的電磁粒子モジュールの開発と爆縮実験の解析・提案を行った。将来的に爆縮計算を行うことを目的としていることから1次元球座標系における離散化を行ったが、非線形項の出現により直交座標系と同一の計算スキームでは計算できないことが判明した。本研究員は非線形項に対して反復法を実装することにより、非物理的な数値加熱を大幅に抑制することに成功した。テスト計算を実施したところ、従来の直交座標コードや実験で得られるエネルギースペクトルと良好な一致を得た。その他にも相対論的運動論モジュールの支配方程式の1次元球座標系における導出や、現有する輻射流体コードの高度化に関する文献調査も前倒しして行っている。 また、本来来年度以降に行う予定であった実験の解析・提案を前倒しして実施した。実験の解析では2次元の流体シミュレーションから得られた物理量を3次元空間に投影し多色光線追跡を行うことで、現実の計測器の感度を考慮した数値的X線写真を構築することに成功した。実験データと直接比較を行ったところ、数値計算は実験を非常によく再現していることが判明し、実験における物理量の予測やシミュレーションの妥当性の検証が可能となった。さらにこのコードを用いて爆縮計算を実施し、高密度爆縮を達成可能なターゲットデザインの検討や等エントロピー爆縮に関する理論的研究を行った。現在は論文化に向けてデータの詳細な解析を実施中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り1次元球座標系における相対論的電磁粒子モジュールの開発を完了した。一般にハミルトン力学系のエネルギー保存性を満足するには適切な数値積分法が必要であるが、一般座標では非線形項の出現により取扱いが複雑化する。本研究では反復解法の実装により非物理的な加熱現象を許容可能な程度に抑制した。また、運動論モジュールの開発を1年前倒しで開始した。先行研究で用いられる計算スキームは旧式で精度の低いものも存在するため、当面は球座標系における定式化のみを実施し、最新の計算スキームを輻射流体モジュールで検証したのちに流用するように方針変更した。流体モジュールの高度化に際して、本研究員は局所人工拡散法 (S. Kawai et al., J. Comput. Phys. 229, 1739, (2010)) に着目した。この手法は不連続面を検出して必要十分な人工粘性を作用させるため、金コーン表面などにおける非物理的な散逸現象や、2温度モデルにおけるエネルギー保存の破れなどの諸問題を解決出来る可能性があり、現在は文献調査やテストプログラム開発を行なっている。 また、爆縮実験の解析や提案も前倒しで実施した。光線追跡法を用いて流体プロファイルからX線写真を構築するコードを開発したことにより、開発中の統合爆縮コードの妥当性の検証が実験との直接比較によりできるようになった。さらに、等エントロピー爆縮に関する理論解析を行い、数値シミュレーションにより理論の正当性を検証した。
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Strategy for Future Research Activity |
当面は局所人工拡散法ベースの流体コード開発を行う。レーザープラズマの1流体2温度モデルはイオンと電子のエネルギー方程式を保存型で記述することが極めて困難であり、エネルギー保存が約束されない非保存型で流体場を記述せざるを得ない。この手法は支配方程式の物理的背景に着目して開発されており、非保存型に対しても自己無矛盾な形式で人工粘性を作用させることが可能であり、エネルギー保存性を著しく改善できると期待される。運動論モジュールも連続体力学の観点で流体モジュールと共通しており、局所人工拡散法を流用できる可能性がある。ただし、この手法はニュートン力学の範疇で開発されており、相対論領域でも実装可能かどうかは詳細な検討が必要である。開発後は各モジュールを連結することで1次元統合コードの開発が完了するが、計算量の大部分は相対論的電磁粒子モジュールに集中することが容易に予想されるため、ノード内並列による高速化についても検討を行う。 また、次年度の実験に向けた検討も行う。レーザープラズマ相互作用により発生する高速電子が流体運動を直接的に駆動するような現象は実験・シミュレーションともに未開拓の領域であり、たとえ1次元であっても統合計算により多くの知見が得られると期待される。具体的には、衝撃波点火スキームのシミュレーションではレーザープラズマ相互作用をモデル化することで計算が行われているが、統合計算により第一原理的な議論が可能になる。
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Research Products
(4 results)