2015 Fiscal Year Annual Research Report
既承認薬を用いたアルツハイマー病におけるEphB2の役割の解明と創薬応用
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15J02654
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
鈴木 功一郎 慶應義塾大学, 薬学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | アミロイドβオリゴマー / EphB2 / 既承認薬ライブラリー / スクリーニング / ブロモクリプチンメシル酸塩 / ジヒドロエルゴタミンメシル酸塩 / セファランチン / レボノルゲストレル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究はアミロイドβ(Aβ)オリゴマーとEphB2の結合がアルツハイマー病の病態に関与するというコンセプトに基づき、その結合を阻害する化合物を探索・評価するものである。まず私はAβオリゴマーとEphB2の結合を評価するアッセイを構築した。具体的にはELISAプレートにEphB2の精製タンパク質を結合させ、オリゴマー化させたビオチン化Aβと化合物を同時に添加し、EphB2に結合したAβオリゴマーをビオチンとアビジンの相互作用を利用して検出するアッセイである。 このアッセイを用いて既承認薬ライブラリーからAβオリゴマーとEphB2の結合を阻害する化合物をスクリーニングした。その結果、840種類の化合物の中から22種類の結合阻害剤を見出した。この22剤の中からAβオリゴマーとEphB2の結合を選択的に阻害する化合物を選出するため、同様のアッセイを用いてこれらの化合物のAβオリゴマーとプリオン(EphB2と同様にAβオリゴマーと結合することが知られている)の結合に対する作用を調べた。その結果、22剤のうち18剤はAβオリゴマーとプリオンの結合も阻害したが、残りの4剤は阻害しなかった。前者(非選択的な18剤)はAβオリゴマーに、後者(選択的な4剤)はEphB2に作用する可能性が高いと考えられる。選択性を示した4剤はブロモクリプチンメシル酸塩、ジヒドロエルゴタミンメシル酸塩、セファランチン、レボノルゲストレルであった。 次にこれらがEphB2に作用することで、その生理機能に影響を与える可能性を考え、EphB2の内因性のリガンドであるEphrinB2との結合に対する影響を調べた。その結果、4剤はいずれもEphB2とEphrinB2の結合に影響を与えなかった。以上の結果から、私は目的としていた化合物を発見できたと考えている。 上述した研究実績は既に論文として発表している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の研究実施計画では本年度は、(1)結合阻害剤のスクリーニング、(2)発見した化合物がAβオリゴマーによるEphB2の分解にどのように影響するかの検証、(3)発見した化合物とEphB2の相互作用解析を予定していた。 (1)については予定通り実施し、目的とする化合物を発見することができた。一方、(2)(3)についてはやや遅れている。(2)に関しては、AβオリゴマーによるEphB2の分解に十分な再現性が得られないという問題がある。この原因としてAβオリゴマーの調製方法や初代培養神経細胞の培養条件に問題があると考え、条件検討を行っている。(3)については、コンストラクトの作製やEphB2安定発現細胞の作製など、解析に必要な準備は進んでいるが、実際に化合物の解析には至っていない。 上述した進捗状況から総合的に判断し、「やや遅れている」と考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに目的の化合物を発見し、またその化合物を評価するために必要な準備が整いつつある。今後は評価方法を確立し、実際に化合物の作用を検証していきたいと考えている。AβオリゴマーによるEphB2の分解に十分な再現性が得られないというのは大きな問題であるが、使用するAβを合成されたペプチドから、Aβを過剰に産生する細胞の培養上精に変更するなどして、対応していきたい。また今後はin vitroでの評価に加え、in vivoでの評価も進めていきたいと考えている。
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Research Products
(1 results)