2016 Fiscal Year Annual Research Report
超精密X線分光で解き明かす巨大ブラックホールの物質放出によるバリオン加熱経路
Project/Area Number |
15J02737
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
瀬田 裕美 首都大学東京, 理工学研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2020-03-31
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Keywords | X線天文学 / ASTRO-H 衛星 / ひとみ / マイクロカロリメータ |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度の研究計画は、2016年2月に打ち上がったX線天文衛星「ひとみ」(ASTRO-H) に搭載した、X線精密分光装置 Soft X-ray Spectrometor (SXS) の軌道上での性能較正、さらに、それを用いた巨大BHの観測である。「ひとみ」衛星は、姿勢系の不具合により1ヶ月で観測中止になった。しかし、短命とは言え、我々のX線マイクロカロリメータ分光装置は問題なく動作した。私は、これを最大限に用い、以下の研究を行った。
(A) SXS 装置の較正 ... 34日間の軌道上動作実績を得た。性能評価と較正に必要なデータを取得できた。特に私は、高エネルギー帯域の較正を行った。SXS 装置は、エネルギー帯域上限値の要求値が 12 keV であったが、軌道上実績では 20 keV 以上まで観測できた。この余剰分は、地上では十分較正されていなかったため、軌道上データで較正する必要がある。そこで私は、12 keV 以上のX線イベントのスクリーニングを見直すと共に、かに星雲の観測データと望遠鏡の Au L 吸収端構造を用いて応答関数とゲインの系統誤差を評価した。 これについて、天文学会で発表した。
(B) 巨大 BH の観測 ... 銀河団の中心に位置する巨大 BH 天体を1天体観測した。要求値 12 keV 以下では強烈な銀河団ガスに埋もれているが、BH からの放射の方が硬く、エネルギーが高くなるに従ってそのコントラストは上がり、20 keV では銀河団ガスの10倍の強度に達する。 私の較正結果を元にデータ解析を行い、20 keV までのスペクトルを作った。これにより、巨大 BH の 6.4 keV 帯域で見られる蛍光鉄X線放射の起源、すなわち巨大 BH のX線放射を吸収して再放射する周辺物質はどこに、どれくらいの見込み角であるか?という設問に切り込める。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
軌道上で得た観測データを十分に使って、SXS 装置の性能較正を行ない、学会発表を行った。しかし、本研究目的の一つである円盤風をもつ BH 天体の観測については、「ひとみ」衛星が1ヶ月で観測中止になってしまったため、計画していた観測は行われなかったが、唯一得られた BH 天体のデータを用い研究を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、日本をはじめ世界中のX線観測の研究者たちと協力して、X線天文衛星のリカバリーミッションに向けた準備をしている最中である。産休・育休後、このプロジェクトに参加し、搭載装置を再開発し打ち上げるべく、研究を進める。
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Research Products
(10 results)
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[Journal Article] In-flight performance of pulse processing system of the ASTRO-H soft x-ray spectrometer2016
Author(s)
Ishisaki, Y., Yamada, S., Seta, H., Tashiro, M. S., Takeda, S., Terada, Y., Kato, Y., Tsujimoto, M., Koyama, S., MItsuda, K., Sawada, M., Boyce, K. R., Chiao, M. P., Watanabe, T., Leutenegger, M A., Eckart, M E., Porter, F. S., Kilbourne, C A., Kelley, R L.
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Journal Title
Proceedings of the SPIE
Volume: 9905
Pages: 11 pp
DOI
Int'l Joint Research
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[Presentation] 「ひとみ (ASTRO-H)」搭載 SXS の高エネルギー帯域スペクトルの較正2016
Author(s)
瀬田裕美, 石崎欣尚, 江副祐一郎, 山田真也(首都大学東京), 辻本匡弘, 前田良知, 小山志勇, 山崎典子, 満田和久(ISAS/JAXA), 藤本龍一(金沢大), 澤田真理(青山学院大), 佐藤浩介(東京理科大), 北本俊二, 星野晶夫(立教大), 田代信(埼玉大), 野田博文(東北大), R. L. Kelley (NASA/GSFC),他「ひとみ」 SXS チーム
Organizer
日本天文学会秋季年会
Place of Presentation
愛媛大学 (愛媛県松山市)
Year and Date
2016-09-14 – 2016-09-16