2016 Fiscal Year Annual Research Report
シロアリの建設行動を用いた自己組織化システムの適応進化の検証
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15J02767
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
水元 惟暁 京都大学, 農学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | Lévy walk / 配偶者探索 / 進化 / フェロモン / 概日リズム / 自己組織化 / タスク分業 / シロアリ |
Outline of Annual Research Achievements |
動物の行動から生じる時空間的パターンの裏に潜む行動ルールと、そのパターンの適応的意義を理解することを目的とした本研究では、今年度は以下のような結果を得た。 昨年度構築した配偶者探索の理論モデルを単純化し、詳細な解析を行った。その結果、昨年度発見したオスとメスが異なる移動パターンを持つときに性的な遭遇確率が最大になるという現象は、性的に異なる移動パターンを持つ集団は、より早く出会うことと確実に出会えることとのトレードオフを、制限時間が中間的な時にうまく扱うことが出来るためであることが明らかとなった(Mizumoto et al. 投稿中)。更にこのモデルを拡張し、配偶者探索が性フェロモンによって媒介されるときの状況を考えた。そして、フェロモンを放出する性が、他性よりもより遅く、より非拡散的に動く時が最適であることを発見した(Mizumoto and Dobata 投稿中)。また、これらの理論予測を実証研究によって支持するために、小動物の内的な歩行パターンを検出するための実験装置を、共同研究によって開発した(Nagaya et al. 投稿中)。研究実施者は主に生物実験による装置の妥当性の確認とデータの解析を行った。 その他には、シロアリを用いて群飛後の棄翅虫の探索行動についての時間的側面についての研究も行った。棄翅虫は群飛後、単に探索のみを行うのではなく、探索―休息のサイクルで探索行動を行うことと、このサイクルは日周リズムを刻むことを発見した(Mizumoto et al. 投稿中)。またメカニズムとして、このリズムには体内時計が寄与しており、光周期と同調することで、明確なリズムが発現することを明らかにした。 更に、一般的に明確な構造物を建設しないネバダオオシロアリの建設行動の解析を行い、この種における建設行動は、少数の個体がほとんどを行うというタスク分業がなされていることが示唆される結果が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画段階では、配偶者探索行動と建設行動の実験からデータを集めることが該当年度の主目的であったが、実験系の確立に想定よりも時間がかかり、論文執筆にいたるのに十分なデータを得ることが出来なかった。 一方、その過程において、探索リズムやタスク分業のような新たな知見が得られた。また、配偶者探索の理論構築において大きな進展があった。 これらの成果は既に論文生産にとりかかっており、既に4本の論文の投稿に至っている。これらを基に、次年度の実験計画をより堅固なものにし、今年度至らなかった点を補償することが出来ると考えられる。 また、昨年度得たコロニー融合実験による成果も該当年度に論文がアクセプトされた。年度内に多くの学会で成果を発表することも出来ており、取材協力などのアウトリーチ活動も行うことが出来た。
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Strategy for Future Research Activity |
開発した微小昆虫の歩行追跡装置を用いて、昨年度モデルから得られた配偶者探索の理論に対して実証研究を行う。また、昨年度までに明らかになってきた、ヤマトシロアリの蟻道形成の活動性が、コロニー内の建設活動の需要によって適応的に制御されていることについて、操作実験により、より強い確証を得る。同時に、これらの成果を基に論文生産を行う。
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Research Products
(11 results)