2015 Fiscal Year Annual Research Report
沖縄「嫁」のライフデザインの変革にともなう"主婦"の再創造に関する人類学的研究
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15J02821
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
吉田 佳世 神戸大学, 国際文化学研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | 主婦 / 嫁 / 伝統的役割の継続 / 脱地縁・血縁 / 子育て文化 |
Outline of Annual Research Achievements |
報告者は、本課題遂行のために採用第一年度は文献調査ならびに現地調査を並行して行った。 年度前半は、関係諸機関(神戸大学図書館、国立民族学博物館、国立国会図書館、法政大学沖縄文化研究所)にて、沖縄を含む日本の既婚女性に関する文献誌史料調査を行った。ここでは第一に人類学・民俗学・社会学において蓄積されてきた父系社会における既婚女性の位置づけに関する先行研究の精読、第二に第二次世界大戦後から今日に至るまでの日本の女性の労働環境ならびに家事・育児の位置づけの変化に関する文献誌史料調査、そして第三にこうした既婚女性をめぐる社会的状況における沖縄の特殊性について調査を進めた。その結果、かつて家制度の維持において既婚女性たちが「嫁」や「主婦」の役割を受容することが必要不可欠だったということ、そして、共働き世帯が主流派に転じた2000年代以降も必ずしも女性の脱嫁化、脱主婦化が一律的に進んでいる訳ではないことが明らかとなった。そのなかでも沖縄は、奄美以北の日本とは異なり既婚女性の専業主婦化が進展しなかったという特殊性が有り、世帯の外の仕事を有することを前提とした既婚女性の「嫁」や「主婦」のあり方を解明する必要があることを明らかにした。 以上の文献誌史料調査の見地を踏まえ、年度後半はレビューの作成と並行して8月と2月に沖縄県での現地調査を行った。1970年代から1990年代の間に子育てをしていた既婚女性を対象に、仕事と家庭の両立や彼女たちの親世代の子育て環境との違いについての聞き取り調査を行った。その結果、いずれの地域においても職場と自宅をできる限り近くにするというやり方で仕事と家庭の両立を図ってきた女性が多く、また、いわゆる地縁や血縁の紐帯が強いというイメージに反して祖父母に子どもの面倒を依頼しにくい人々が一定数いるということも明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
報告者は、初年度である本年において、これまで収集してきた情報の整理とレビューの作成を通じて、必要な情報について精査することで、研究課題に関わる論点を明確化した。また、こうしたデータをもとにした現地調査を実施し、必要な情報と新しい見地を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで収集してきた情報で、十分整理されていないため生かし切れてこなかったものを十分活用するために、資料の整理と集約化・レビューの作成については、規模を大きくして引き続き行っていく。また、来年度は2000年代以降の子育て世代の既婚女性を対象に聞き取り調査を継続する。また、報告者の研究課題は女性の労働力化という日本社会における急務とされる問題とも関わっているため、研究者との意見交換を積極的に行い、また、口頭発表ならびに論文の公開を通じて研究の深化と研究者ネットワークの構築を積極的に行っていく。
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