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2015 Fiscal Year Annual Research Report

公共事業を巡る報道と世論についての実践的社会科学研究

Research Project

Project/Area Number 15J02923
Research InstitutionKyoto University

Principal Investigator

田中 皓介  京都大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)

Project Period (FY) 2015-04-24 – 2017-03-31
Keywords公共事業 / 世論 / メディア / 新聞
Outline of Annual Research Achievements

本研究は,公共事業の実施に影響を及ぼすと考えられるマス・メディア報道に焦点を当てた研究である.公共事業を巡る世論問題について,人々の賛否意識についてはいくつかの先行研究が見られるものの,その世論に影響を及ぼし得るマス・メディア報道に焦点を当てた実証的な知見は十分な蓄積がなされていなかった.そのため本研究では報道の実態や,その報道を生み出す要因を明らかにし,適切な世論状況の形成を通して社会の漸次的な改善を期するものである.
そのためにまず,戦後日本における公共事業を巡る新聞社説論調を定量的に分析し,1950年代からその論調が否定的なものへと徐々に変化し,特に2000年代における報道の極端に批判的な傾向を実証的に明らかにした.
また,新聞報道にける歪み,つまり何が報道され,何が報道されていないかを検証するため,米国一般教書演説を事例として,その新聞報道内容を定量的に分析した.その結果,現代日本の新聞において,ケインズ経済学的政策が,新自由主義的政策に比べて極めて報道されにくいに現状を実証的に示し,イデオロギーを背景とする報道の歪みの存在可能性が示唆された.
一方で,報道の制作過程に着目し,ヒアリング調査や既存の出版物に基づいてとりまとめたマス・メディアの内実についての知見から,報道内容に影響を及ぼす要因の探索的な研究を行った.その結果,記者の個人的な能力や資質の問題,メディアの組織構造上の要因,さらには情報源となる官公庁からの影響や,報道受け手の人々からの影響等,様々な問題を浮き彫りにした.
以上より得られる本研究成果は,土木計画をはじめ公共事業を巡る報道および世論について,これまでになかった,その実態を実証的に明らかにするものであり,今後公共事業の適切な実施に向けた報道および世論についての課題改善の実践・展開を考えるにあたっての,重要な知見を与えるものとなることが期待される.

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

研究計画においては,1)公共事業を巡る時系列分析,2)公共事業を巡る世論状況の海外比較分析,3)マスメディア構造・報道意図の分析,を2年間で実施する予定であった.1年目には1)および2)を行うことを予定していたが,結果の社会的な影響の大きさ等を考慮して,2)の海外比較分析よりも,3)マスメディア構造・報道意図の分析を優先して行った.
具体的には1)公共事業を巡る時系列分として,主要な地位を占める読売新聞と朝日新聞を対象に,戦後日本における公共事業を巡る新聞社説論調を定量的に分析し,特に2000年代における報道が極端に批判的な傾向であったことをはじめ,その報道傾向の実態を明らかにした.加えて,米国一般教書演説を事例として,その新聞報道内容を定量的に分析することによって,現代日本における新聞報道内容に,特にイデオロギーを背景とするような歪みが存在している可能性が示唆された.
そして,3)マスメディア構造・報道意図の分析として,報道の制作過程に着目し,ヒアリング調査や既存の出版物に基づいてとりまとめたマス・メディアの内実についての知見から,報道内容を規定している要因や背景に関する探索的研究を行い,情報源組織,記者やメディア組織,さらには受け手の人々など,様々な問題を浮き彫りにした.
以上のように,研究計画から順序は変わったが,全体の研究計画から見た進捗としては当初の計画とそれほど相違のないものと考える.

Strategy for Future Research Activity

今後の研究方針としては,より広い視点から,日本における公共事業を巡る報道や世論の状況の分析を行う.そのために,公共事業を巡る世論状況の海外比較分析を行う.日本の報道機関の報道傾向を明らかにするにあたって,諸外国の状況と比較することによって,相対的に日本の特異性を明らかにすることが可能であると考える.特に多くの国において主要なメディアであり,さらにデータ化によって検証が容易であると考えられる,新聞報道を対象として分析を行う.そのために,それぞれの国の各種メディアのデータベースを利用する.また,公共事業を巡っては社会や経済,地形・気象の状況など様々な要因によってその事業実施の意義が異なってくると考えられる.そのため,似たような状況における国々との比較に意義があると考え,先進諸国を対象に比較を行う.まず各国の,特にニュースの解説や社説といったメディアの報道,あるいは専門領域における議論等を定性的に検証することで,公共事業の肯定的・批判的論点(特に日本における報道で見られる不正,財政,環境破壊といった論点)についての世論,報道の傾向を探る.そして,その中で見られたキーワードを抽出した上で,そのキーワードと公共事業(=public works)を検索語として,各国の報道傾向の定量化を行う.そうすることでメディア報道の国際間比較を可能とし,さらには,日本の報道の特色についての知見が得られると期待できる.

  • Research Products

    (4 results)

All 2016 2015

All Journal Article (1 results) (of which Peer Reviewed: 1 results,  Acknowledgement Compliant: 1 results) Presentation (3 results)

  • [Journal Article] 1950年代から現代までの公共事業を巡る新聞社説についての時系列分析2015

    • Author(s)
      田中皓介,藤井聡
    • Journal Title

      土木学会論文集D3 (土木計画学)

      Volume: 71 Pages: I_143-I_149

    • DOI

      10.2208/jscejipm.71.I_143

    • Peer Reviewed / Acknowledgement Compliant
  • [Presentation] 報道の送り手側の内実に関するヒアリング調査に基づく公共事業批判報道の背景の考察2016

    • Author(s)
      田中皓介,藤井聡
    • Organizer
      土木計画学研究発表会
    • Place of Presentation
      北海道
    • Year and Date
      2016-05-28 – 2016-05-29
  • [Presentation] 報道の送り手側の内実に関する文献調査に基づく公共事業批判報道の背景の考察2015

    • Author(s)
      田中皓介,藤井聡
    • Organizer
      土木計画学研究発表会
    • Place of Presentation
      秋田
    • Year and Date
      2015-11-21 – 2015-11-23
  • [Presentation] 米国一般教書演説を巡る大手新聞社の報道内容分析2015

    • Author(s)
      田中皓介,藤井聡
    • Organizer
      土木計画学研究発表会
    • Place of Presentation
      福岡
    • Year and Date
      2015-06-06 – 2015-06-07

URL: 

Published: 2016-12-27  

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