2016 Fiscal Year Annual Research Report
植物の免疫応答における移動性化学シグナルと輸送体の同定に関する生物有機化学
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15J02984
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
及川 貴也 東北大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | 輸送体 / 傷害応答 / 植物ホルモン / タンパク質間相互作用 |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者は,植物の防御応答に関与する植物ホルモン「ジャスモン酸イソロイシ(JA-Ile)」の輸送体JAT/GTR1を見出した.当該年度は,植物体を用いた実験をより詳細に検討した.傷害処理を施した植物体の非傷害部位において,傷害応答の程度を野生型とgtr1変異植物体で比較した.その結果,非傷害部位における傷害応答関連遺伝子の発現量は,gtr1変異体の方が野生型よりも高くなっていた.GTR1はJA-Ileを移動生化学シグナルとして輸送し,傷害応答を伝達しているわけではないことを示唆する.ジャスモン酸類は,植物の防御応答を高める効果を有しているが, 同時に成長阻害といった負の効果も有している.GTR1は,過剰な傷害応答の火消しに関与しているのではないかと考えている. 申請者は,GTR1が植物ホルモン「ジベレリン」も輸送することを明らかにした.GTR1は防御応答に関わる二次代謝産物である「グルコシノレート」を輸送することも報告されている.これらのことから,GTR1はJA-Ile,ジベレリン,グルコシノレートといった構造の全く異なる基質を厳密に認識し輸送できる多機能輸送体であることが示唆された.GTR1の活性調節および基質認識メカニズムを明らかにするために,実験を行った. GTR1と同じファミリーの一員であるNPF6.3は二量体を形成することで,基質親和性を変化させる.申請者は,GTR1にも類似したメカニズムが存在し,輸送活性の調節が行われていると予想した.まず,GTR1が二量体を形成し得るかどうか確かめるために,タンパク質間相互作用検出を試みた.その結果,GTR1は二量体を形成することを明らかにした.また,二量体形成に重要なアミノ酸に変異を加え,各基質に対する変異GTR1タンパク質の活性を検討した.その結果,単量体・二量体形成が基質認識に影響を与えることが明らかとなった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
植物体におけるGTR1の生理学的役割を明らかにするため,gtr1変異植物体の傷害時の遺伝子発現応答を調べた.その結果,非傷害部位における傷害応答が野生型よりもgtr1変異体で高まっていることが明らかとなった.これは,当初の予想とは異なる結果ではあるが,GTR1が過剰な傷害応答の沈静化に働いている可能性が示唆された.ジャスモン酸イソロイシンの移行の制御に関して,全く新しい視点を提供した. また,アフリカツメガエル卵母細胞の異種発現実験系により,単量体・二量体の制御により,GTR1の活性が調節されることが示唆された.
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Strategy for Future Research Activity |
GTR1は,ジャスモン酸イソロイシン,ジベレリン酸,グルコシノレートといった,構造的に多様な基質を輸送できる「多機能輸送体」であることが示されている.今後は,アフリカツメガエル卵母細胞の実験系を駆使し,GTR1の活性調節機構に関して,より詳細な知見を得ることを目的として実験を進める.各基質に対して,輸送活性の基質親和性や,反応速度を導出し,定量的な評価を行う.また,GTR1の翻訳後修飾(リン酸化・グリコシル化等)による活性調節機構の存在を視野に研究をすすめる.
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Research Products
(3 results)
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[Journal Article] GTR1 is a jasmonic acid and jasmonoyl-l-isoleucine transporter in Arabidopsis thaliana2017
Author(s)
Yasuhiro Ishimaru, Takaya Oikawa, Takeshi Suzuki, Syohei Takeishi (Hokkaido Univ), Hideyuki Matsuura(Hokkaido Univ), Kosaku Takahashi(Hokkaido Univ), Shin Hamamoto, Nobuyuki Uozumi, Takafumi Shimizu(RIKEN), Mitsunori Seo(RIKEN), Hiroyuki Ohta (Tokyo Institute) & Minoru Ueda
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Journal Title
Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry
Volume: 81
Pages: 249-255
DOI
Peer Reviewed
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