2016 Fiscal Year Annual Research Report
自己発熱機能を有する新型溶融塩ブランケットシステムの開発
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15J02987
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
宍戸 博紀 東北大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | 溶融塩 / 自己冷却式ブランケット / 分子動力学 / 一方向凝固法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、Flibe (LiF-BeF2) およびFlinabe (LiF-NaF-BeF2) を想定した既存溶融塩に対し、重元素を添加した自己発熱機能を有する高性能新型溶融塩の開発、およびその溶融塩を用いたブランケットシステムの設計最適化を目指す。 2年目においては、昨年度に引き続き自己発熱溶融塩のベースとなるFlinabeの熱物性値を数値解析により評価し、それらを基にブランケット熱設計検討を実施した。また、一方向凝固法を用いた試験環境を整備し精製試験を実施した。 Flinabeのブランケットシステム適用性を評価するために、いくつかの組成比それぞれに対し熱物性値の数値解析評価を実施した。それらを基にプラズマからの片面加熱条件下でのブランケット熱設計を検討した結果、FlinabeはFlibeよりも設計の温度余裕度を増大できるが、低温度域では粘性が指数関数的に増加することから圧力損失が極めて大きくなってしまう。温度余裕度確保には冷却材の流速を上げる必要があり、高流速になるほど圧力損失が上昇するというトレードオフから考えると、熱流束の上限値は0.7 MW/m2程度となる。ヘリカル型核融合炉FFHR-d1の設計では1.0 MW/m2とより高い熱流束が想定されるため、現状Flinabeの適用可能性が十分にあるとは言えない。 溶融塩精製に関しては、より簡便かつ大量に精製できる手法確立を目的として、一方向凝固法の適用性を検討した。Flinabeは毒性の強いBeF2を含むことから、第一段階としてFlinak (LiF-NaF-KF) を用いた評価を行った。精製後の金属不純物量評価により、一部の金属元素に関しては試料の上部に偏析することが確認されたものの、その他の主要な金属元素に関しては有意に偏析する結果には至っていない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Flinabeの物性値評価に関して組成比ごとのデータ拡充を実施し終えた。従来候補Flibeに比して低融点であるFlinabeであるが、低温度域では粘性が大きく増加してしまうことから冷却材としての適用が困難である可能性がある。実際に熱設計検討による見積もりによって、融点低下により確かに温度余裕度は増大できるものの、圧力損失が極めて大きくなるために流速を減少せざるを得ず、結果的にデザインウィンドウは大きく拡大できないことを明らかとした。また、溶融塩精製における一方向凝固法の適用性評価を試み、一部の金属元素が偏析し除去し得る結果を得ることができた。以上の理由から、当該研究は概ね順調に進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでのFlinabe熱物性評価により、核融合炉ブランケットシステム適用にはさらなる物性改善が必要であることが明らかである。今後は、Flinabeに対して別なフッ化物塩をさらに添加した四元系溶融塩の有用性を検討し、以て溶融塩ブランケットシステムの成立性を示す。 溶融塩精製に関して、引き続き一方向凝固法の適用性を評価していく。現状偏析の傾向が得られていない金属元素の除去可能性、また非金属元素不純物の除去可能性について試験していく予定である。
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Research Products
(3 results)