2016 Fiscal Year Annual Research Report
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15J03034
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| Research Institution | The University of Tokyo |
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Principal Investigator |
田中 克 東京大学, 農学生命科学研究科, 特別研究員(DC1)
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| Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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| Keywords | 分散型 / Daumone BX / RNA抽出 / RNA-seq解析 |
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| Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、世界的に被害を広げるマツ材線虫病の蔓延機構解明を目指し、その主因となる病原体マツノザイセンチュウ（以下ザイセンチュウ）の分散型誘導メカニズムに化学・分子生物学の両面からアプローチした研究である。
前年度までにザイセンチュウから分散型III期出現率の高い系統を作出し、ザイセンチュウ培養シャーレからの水抽出物が分散型III期誘導活性を持つことが示された。また、ザイセンチュウ全ステージからのRNA-seq解析により、分散型III期は増殖型と分散型IV期の中間に位置するステージであることが明らかとなった。
本年度は、他の生物・物質の混入を排除し、ザイセンチュウの分泌物内に分散型III期誘導活性物質が含まれていることを示した。また、前年度のRNA-seq解析を詳細に行い、ザイセンチュウからの簡易的なRNA抽出手法も開発した。
培養シャーレからザイセンチュウのみを抽出し、水中で振とう培養した。その培養ろ液をザイセンチュウに添加したところ、対照区と比較して有意にDIII出現率が高かった。従って、ザイセンチュウは分散型III期誘導活性のある物質（Daumone BXと仮称）を分泌していることが明らかとなった。
ザイセンチュウからのRNA抽出は、従来法では多くの頭数が必要であり、労力・時間的にも非効率的であった。そこで、従来の物理的破砕ではなく、化学的溶解によって抽出したところ、高品質のRNAが大量に得られた。また、労力・時間も低減し、今後のRNA実験を促進させるような新手法開発に成功した。
ザイセンチュウ全ステージのRNA-seq解析により、分散型III期の遺伝子発現パターンは増殖型ステージと類似しており、ストレス耐性・栄養代謝能に重点が置かれていた。従って、分散型III期は枯死樹体内という環境に適応した遺伝子発現パターンを示すことが明らかとなった。
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| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度までに構築した分散型III期誘導アッセイ系は物質抽出の時点から粗悪なものであったが、本年度の実験により物質抽出・アッセイ系ともに改善され、分散型III期誘導活性物質（Daumone BX）をザイセンチュウが分泌していることが明らかとなった。
また、ザイセンチュウからの効率的なRNA抽出手法が確立され、以降の解析をより簡便に行うことができるようになった。
他にも、ザイセンチュウ全ステージのRNA-seq解析によって、分散型III期の枯死樹体内という不適環境下における適応が明らかとなり、分散型III期の性状が詳細に明らかとなった。
以上の理由から、本研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
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| Strategy for Future Research Activity |
次年度はザイセンチュウの分散型III期誘導アッセイ系によって、分散型III期誘導中のザイセンチュウから、前年度開発したRNA抽出手法により、RNAサンプルを得る。次世代シーケンサーによる配列解読後、ザイセンチュウ全ステージのRNA-seq解析により明らかとなった分散型関連遺伝子について、分散型III期誘導中の遺伝子発現挙動を詳細に調べる。明らかとなった分散型関連遺伝子について遺伝子機能解析を行う。
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