2016 Fiscal Year Annual Research Report
物流からみた戦間期日本の分業構造の分析-四大都市圏の形成・発展-
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15J03100
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
見浪 知信 京都大学, 経済学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | 大阪 / 東京 / 物流 / 貨物集散 / 分業構造 / 雑貨 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は、国内の分業、とりわけ大阪と東京の地域間比較について分析を進めた。具体的には、①雑貨輸出について分析した。戦間期、とりわけ1930年代において、日本は輸出を急速に拡大させた。輸出先においても、それまでの中国、アメリカ等に加え、新たに満洲や、さらに中南米やアフリカなどといった地域へ、全世界的に拡大した。その拡大における、雑貨品の輸出に焦点にあて、統計などから定量的なデータを示すと同時に、その拡大を成し遂げた要因として、地方公共団体の輸出振興政策について論じた。地方の産業政策に加え、地方間の競争という2つの観点から分析することで、大阪の雑貨輸出に対する積極性と東京の国内市場を重視する産業振興政策について明らかにした。戦前期において、大阪・東京ともに積極的な輸出振興を展開していた。さらに、当時は大阪が先進的な取組みを行っており、東京は大阪のフォロワーという立場であった。両地方は先に述べた研究目的の視点の分析に適しており、現在は論文執筆中である。 また、平成28年度の活動として、他にも②綿織物の集散についても同様に分析を続けている。物流の統計から戦間期日本の分業構造を読み解くことは、先に述べた通りである。その際に、綿織物に焦点を当てて、具体的に分析する。綿織物は大きく内地向けと輸出向けの2つに分けられる。綿織物は主にアジアに輸出されることもあり、輸出向け綿織物については大阪が集散地の役割を果たしていた。それに加え、内地向け綿織物についても、大阪は集散地であり、港湾・鉄道インフラに加え、商社の集積、および染色加工部門の関西集中が相まって大阪の構造は戦間期を通じてその規模は拡大し続けた。一方東京は、雑貨に引き続いてその販路は東京近辺の市場に集中していった。この論文も現在執筆中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度、上記「研究実績の概要」で述べたように、雑貨輸出について、さらに綿織物の集散について、という2つの研究を進めてきた。このことは、本研究課題(物流から見た戦間期日本の分業構造の分析)の課題において、2つの側面のうち、1つを明らかにすることができたと考える。つまり、戦間期日本の分業について、国際分業・国内分業と分けるところの国際分業パートについての研究を終えたことになる。戦間期日本の輸出において、最も重要な輸出品目が、綿織物を代表とする繊維製品と、雑貨であった。その輸出構造を明らかにすることは、戦間期日本の国際分業について、物流の観点から様々な観点を明らかにした。さらに、綿織物の集散については、雑貨化のように輸出基地=生産地(大阪)のような構造ではなく、その生産地は全国にわたっていた。全国展開された生産と、その製品の輸出を明らかにした、という点で、国際分業のみならず、国内分業について、研究をすすめる礎となっている。 また、主要学術誌に対し、複数稿の論文を投稿するなど、積極的な論文執筆にも取り組んだ。 このような活動とともに、経済史関係の学会においても、多くの研究報告を行った。例をあげれば、社会経済史学会第85回全国大会(題:「1930年代の新市場輸出拡大-輸出補償法の分析を中心に-」2016年6月11日) 経営史学会関西部会(題:「戦前日本の輸出振興政策-通商情報・市場調査について-」、2016年6月25日) 政治経済学・経済史学会全国大会(題:「戦間期日本の雑貨品輸出-東京と大阪の地域間比較の観点から-」10月22日)などである。
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Strategy for Future Research Activity |
先の「現在までの進捗状況」で述べたように、現在までは、戦間期日本の分業構造における国際分業パートを焦点にあて、分析を続けてきた。その結果、主要輸出品である雑貨や綿製品について、輸出と日本の地域別の分業構造について明らかにすることができた。今後の研究の推進方策について述べると、今後は国際分業に代わり国内分業について議論を進めていく。つまり、戦間期日本において、主要輸出品ではない商品について、国内の物流統計等から分析を進める。具体的には、重化学工業生産品である。日本の重化学工業については、戦間期以降は生産の拡大が継続的にみられるが、1930年代以降その傾向はさらに強まることとなった。しかしそれらの製造品は日本帝国圏内を除き、外国に輸出されるほどの競争力をもたず、輸出されることは少なかった。これらの商品に焦点をあて、物流統計を用いて、生産統計と結合させることで、戦間期の重化学工業について、地域的分業構造の形成および広がりについて論じる。その際に重要な観点となるのが、京浜地域と阪神地域の比較検討である。京浜地域と阪神地域は、どちらも日本の中心的な工業地として、重化学工業化にともなう生産増を記録した。しかしながら、京浜地域の伸び方は、阪神地域をゆうに超えている。この2つの地域の比較検討を主題に置くこで、本研究がテーマとして掲げる戦間期日本の分業構造の分析について、国内流通の観点からの研究の進展が予想される。
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Research Products
(3 results)