2015 Fiscal Year Annual Research Report
異相界面を機能発現場とするサイアロン基白色発光蛍光体の材料設計と開発
Project/Area Number |
15J03274
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Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
坂野 広樹 名古屋工業大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | サイアロン・アロンポリタイポイド / 白色発光蛍光体 / 不規則構造 / 3次元電子密度分布 / 結晶構造解析 / X線粉末回折 / 透過型電子顕微鏡 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまで詳細な結晶構造が報告されていなかったサイアロン・アロンポリタイポイド化合物のうち、16H-SiAlONと20H-AlONの合成に成功した。透過型電子顕微鏡とX線粉末回折で決定した構造モデルは、一部の陽イオン席が分割原子モデルで表される不規則構造モデルであった。これは、複数種類の規則構造モデルで表される分域が空間的に平均化されたものと結論付けた。また、最大エントロピー法(MEM)とMEMに基づくパターンフィッティング法で決定した3次元電子密度分布により、不規則構造モデルの妥当性を確認した。以上の成果により、過去に合成が報告されている全てのサイアロン・アロンポリタイポイド化合物(8Hと12H, 15R, 16H, 20H, 21R, 27R)の詳細な結晶構造を本研究グループで解明できた。また、各化合物の格子定数と単位胞内のc軸方向への配位多面体の積層数は強い相関を示し、未知のサイアロン・アロンポリタイポイド化合物の探索で、精密な格子定数を推測可能となるといった貢献が期待される。 本研究で合成した白色発光蛍光体において、Euが新規な配位環境を形成することを発見した。今後、Euの新規な配位環境について、形成メカニズムや適用可能な元素の種類を検討し、発光特性以外にも特性発現の可能性を探る。 本蛍光体の微小領域での発光特性を評価し、結晶と非晶質相の発光スペクトルの分離に成功した。本研究グループで解明した15R-SiAlONの不規則構造モデルを基に、結晶内のEu2+イオン席を検討した。過去に報告されているサイアロン関連化合物の結晶構造を参考に、Eu2+イオンを中心とした配位多面体の形状や、陰イオンとの原子間距離を考慮し、Eu2+イオンが占有可能な席を見出した。今後、発光特性に影響するEu2+イオンの配位環境を明らかにする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
該当年度での研究目的の一つである、これまでに結晶構造が報告されていないサイアロン・アロンポリタイポイド化合物(16H-SiAlONと20H-AlON)の合成に成功した。また、透過型電子顕微鏡とX線粉末回折で、結晶構造が分割原子モデルで表される不規則構造であると明らかにした。【研究実績の概要】で述べた通り、過去に合成の報告がある全てのサイアロン・アロンポリタイポイド化合物(8Hと12H, 15R, 16H, 20H, 21R, 27R)の詳細な結晶構造を、本研究グループで明らかにした。本化合物群の結晶構造は、陽イオンを中心とした配位多面体から成る層がc軸方向に積層した構造とみなせる。積層数と格子定数には強い相関が確認され、未発見のサイアロン・アロンポリタイポイド化合物の格子定数を予測可能となった。 もう一つの研究目的である、本研究で開発した白色蛍光体の発光特性と結晶構造との相関を探るため、微小領域での発光スペクトルを解析した。その結果、15R-SiAlON結晶と間隙の非晶質相の発光スペクトルを明確に分離することに成功した。これまでの研究では、結晶内に賦活された希土類元素は未発見であったが、今回の成果は結晶内で希土類元素の存在を示唆した。本研究グループが明らかにした15R-SiAlONの不規則構造モデルを検討し、希土類元素が占有する結晶学的席を見出した。 以上の成果が得られており、計画以上に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画通り、本研究で開発した白色発光蛍光体の応用に向けた研究を推進する。これまでの研究過程でサイアロン・アロンポリタイポイド化合物の合成条件と詳細な結晶構造が明らかになり、希土類元素を多種の化合物に賦活可能となった。各化合物は、単位胞内のc軸方向への多面体層の積層数と化学組成で特徴付けられる。そのため、賦活元素の配位環境は母体とする化合物の選択で、調整可能と考えられる。この方針に従い、賦活元素と化合物の組み合わせを複数作製し、発光強度や波長の変化を調査する。 本研究でサイアロンポリタイポイド化合物の結晶構造中に希土類元素の存在が示唆された。結晶構造を明らかにした全てのサイアロン・アロンポリタイポイド化合物について、希土類元素の配位環境を検討し、発光特性と結晶構造との相関を明らかにする。またその新規な賦活様式を利用した特性の発現を目指し、発光特性以外にも機能性材料の開発に発展させたいと考えている。
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Research Products
(7 results)