2015 Fiscal Year Annual Research Report
達成目標と解釈レベルが記憶抑制/促進に及ぼす影響:検索経験パラダイムを用いた検討
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15J03332
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
池田 賢司 同志社大学, 心理学部, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | 達成目標 / 記憶 / 符号化 / 検索誘導性忘却 / 検索誘導性促進 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,達成目標が検索誘導性忘却と促進に及ぼす効果について検討する実験を実施した。検索誘導性忘却に関して,本実験で得られた結果とIkeda et al. (2015) のデータを用いたメタ分析を行ったところ,習得目標条件では検索誘導性忘却が生じず,遂行目標条件では忘却が生じることが示唆された。これは先行研究に一致する結果であるといえ,習得目標条件で検索誘導性忘却が生じなかった背景には,関連性処理に基づく事例間の統合が生じたものと考えられる。これに対して,検索誘導性促進に関しては,習得目標条件では促進が生じ,遂行目標条件では生じないと予測していた。しかしながら,このような仮説とは一致せず,習得目標条件において,Rp-項目の忘却が生じていることが示された。 このような仮説と不一致な結果は,達成目標が記憶過程(符号化過程)に影響を及ぼした結果である可能性がある。そのため,次に達成目標と符号化過程についてより詳細な検討を加えることとし,本年度ではさらに3つの実験を実施した。その結果,習得目標条件では項目特定性処理を統制条件よりも行わなくなり,遂行目標条件では関連性処理を統制群よりも行わなくなることが示唆された。本研究の結果は,習得目標が検索誘導性忘却を消失させるメカニズムを支持するものであるが,この結果からでは前述した遅延テストにおける仮説と不一致な結果を説明できるものではない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は,当初の研究計画に従い,達成目標が検索誘導性忘却・促進におよぼす影響を予定通り実施した。ただし,上記の実験の追試までは実施できなかった。しかし,本研究の結果が仮説とは一致するものではなかったため,追試を実施する前に,この点について符号化の観点からさらなる検討を加え,一定の研究成果を得ることができた。これらの点からおおむね順調に研究は進展しているものといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究では,まず習得目標条件での遅延テストにおけるRp-項目の忘却が追試されるかという点,そして達成目標と符号化,検索過程の関係性の精緻化という観点から実験を行っていく必要があると考えられる。また,解釈レベルに関しても,解釈レベルの違いが符号化に及ぼす影響についてより詳細な検討を行った上で,検索誘導性忘却・促進に及ぼす影響を検討していく。
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