2016 Fiscal Year Annual Research Report
量子井戸太陽電池の特性向上および多接合デバイスへの応用
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15J03447
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
トープラサートポン カシディット 東京大学, 工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | 量子井戸太陽電池 / キャリア輸送 / 光電流 / 理論モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
量子井戸太陽電池は広域の吸収スペクトルを持ち,太陽光を効率よく吸収することができるが,光生成したキャリアが再結合しやすく,光電流として外部回路に取り出しにくい傾向がある.昨年度に提案した実効移動度モデルを用いて光キャリアの再結合と回収効率の振る舞いを解明し,「量子井戸太陽電池の光電流」を初めて定式化した.解析で得られた光電流の表式を実験結果と比較し,高いバックグラウンドドーピングや光バイアス下の量子井戸太陽電池の光電流の実験値を正しく再現することができた.最後に量子井戸の最適な位置や最適な積層数など,定量的なデバイス設計指針を初めて提案し,量子井戸太陽電池の高効率化に向けた体系的な戦略を明らかにした. 光電流だけでなく,量子井戸太陽電池の開放電圧の振る舞いについて調べた.開放電圧は発光効率,すなわち発光に伴う再結合過程の割合によって決まるため,受光デバイスである太陽電池でも発光特性の理解が必要である.これまでの量子井戸の発光効率(または結晶品質)の評価手法はほとんど間接的な測定であり,定性的な評価しかできない上に,測定条件によっては誤解を招く結果を得ることがあることを指摘した.これに対して,エレクトロルミネッセンス法は発光効率を正確に評価できることを示した.さまざまな成長条件の量子井戸の発光効率をこの方法で評価し,残留歪による結晶性の低下,ヘテロ界面の中間層による結晶性の向上およびそれに伴った太陽電池の開放電圧への影響を観測した.この方法によってキャリア再結合寿命というデバイス設計に重要な情報を抽出することができる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画通りに量子井戸太陽電池の光電流特性を解析し,それを再現するシミュレータの構築やデバイス設計指針の提案に成功した.ただし,本研究において提案した光電流のモデルは従来のモデルとは異なる概念を用いているため,実効移動度がどのように決まるかや暗電流特性がどのように振る舞うかなど,明らかになっていない要素がまだ含まれている.今後モデルの改善をし,より応用しやすいようにする必要があると考えられる. 計画していた結晶性とキャリア寿命の関係性の調査もエレクトロルミネッセンス法によって順調に評価を進めている最中である.現時点ではまだ定性的な関係性にとどまっているが,結晶性の劣化の根源である欠陥を体系的に調べることでより定量的な評価が可能になると考えられる. 研究が順調に進展しているため,計画通りに6月に開催される 43rd IEEE Photovoltaic Specialists Conference および7月に開催される 8th International Conference on Metal Organic Vapor Phase Epitaxy の学会に投稿し,成果発表を行った.
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Strategy for Future Research Activity |
今後の実験の方向性として,試みてきた量子井戸太陽電池の理論モデルを完結する予定である.提案した光電流の表式の中に量子井戸の実効移動度というパラメータが入っており,このパラメータは実験的に求めることができるが,本質的に何で決まるかはよく知られていない.今後,量子井戸の実効移動度を理論的に求めることができないかを検討する.実効移動度の理論を確立することができれば,量子井戸太陽電池への応用だけでなく,量子井戸を用いたセンサー,発光ダイオードやレーザなどにも適用できる重要な概念である.さらに,昨年度では発光効率の測定手法を提案したが,理論的なアプローチをし,量子井戸太陽電池の発光効率および開放電圧をどのように解析的に記述できるかを検討する予定である.
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Research Products
(11 results)
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[Journal Article] Absorption threshold extended to 1.15 eV using InGaAs/GaAsP quantum wells for over-50%-efficient lattice-matched quad-junction solar cells2016
Author(s)
K. Toprasertpong, H. Fujii, T. Thomas, M. Fuhrer, D. Alonso-Alvarez, D. J. Farrell, K. Watanabe, Y. Okada, N. J. Ekins-Daukes, M. Sugiyama, and Y. Nakano
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Journal Title
Progress in Photovoltaics: Research and Applications
Volume: 24
Pages: 533-542
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research / Acknowledgement Compliant
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[Presentation] Electroluminescence-based quality characterization of quantum wells for solar cell applications2016
Author(s)
K. Toprasertpong, T. Inoue, A. Delamarre, K. Watanabe, M. Paire, L. Lombez, J. -F. Guillemoles, M. Sugiyama, and Y. Nakano
Organizer
18th International Conference on Metal Organic Vapor Phase Epitaxy
Place of Presentation
San Diego, CA, USA
Year and Date
2016-07-10 – 2016-07-15
Int'l Joint Research
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