2016 Fiscal Year Annual Research Report
NF-κBのパートナータンパク質IκBζによる転写活性化複合体の形成機構の解明
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15J03454
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
神田 朗 九州大学, 医学系学府, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | 遺伝子発現制御 / タンパク質-DNA間相互作用 / IκBζ |
Outline of Annual Research Achievements |
NF-κBは、自然免疫応答に関わる遺伝子の発現誘導に中心的な役割を果たす転写因子である。NF-κBのパートナータンパク質であるIκBζは、NF-κBのコアクチベーターとして働き、抗菌タンパク質lipocalin-2をコードするLcn2遺伝子など、NF-κBの標的遺伝子の中でも特定の遺伝子の転写を活性化する。IκBζは、NF-κBとの結合を介して標的遺伝子の転写を活性化すると考えられているが、どのようにIκBζが特定の遺伝子を選んでいるのか、その分子機構は未解明である。これまでに私は、IκBζは、NF-κBと結合することに加えて、NF-κBが結合するDNA配列の下流にあるCCCCTC配列を認識することを明らかにしていた。本研究の目的は、この知見をもとに、IκBζが標的遺伝子を選択する分子機構を明らかにすることである。昨年度までに得ていたIκBζがCCCCTC配列を認識するという知見は、主に試験管内での実験を行うことで得られたものであった。そこで今年度は、IκBζによるCCCCTC配列の認識機構を細胞レベルで明らかにすることを試みた。まず、IκBζと細胞内在性Lcn2遺伝子のCCCCTC配列を含む領域との結合をクロマチン免疫沈降法により検討し、IκBζが細胞内在性のCCCCTC配列を認識しうることを確かめた。さらに、このIκBζのCCCCTC配列との結合が、細胞内においてIκBζに対する翻訳後修飾(特にアセチル化修飾に注目した)によって調節を受けるかどうかについて検討を行った。その結果、IκBζによるLcn2遺伝子の転写活性化はアセチル化酵素の阻害剤によって影響を受けず、また、アセチル化修飾を認識する抗体によってIκBζは認識されなかった。従って、IκBζは細胞内でCCCCTC配列を認識するが、その結合はIκBζに対するアセチル化修飾によって調節を受けないことが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、IκBζによるCCCCTC配列の認識機構を細胞レベルで明らかにすることを試み、IκBζがクロマチン構造をとる細胞内在性のCCCCTC配列を認識しうることを明らかにした。さらに、この結合は細胞内でIκBζに対する翻訳後修飾によって制御されないことも明らかにすることが出来た。従って、順調に研究が進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに私は、試験管内での実験および細胞レベルでの実験を通じて、IκBζは、NF-κBに結合することに加えて、NF-κB結合配列の下流にあるDNA配列(CCCCTC配列)を認識することによって標的遺伝子を選択していることを示唆する結果を得てきた。今後は、細胞レベルでの理解を更に深めるべく、IκBζとCCCCTC配列の結合が、細胞内でヒストン修飾やDNAメチル化等によって制御を受けるのかどうかについて検討を進めていく計画である。
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Research Products
(3 results)