2015 Fiscal Year Annual Research Report
セロトニン-Rhoシグナル伝達経路による神経軸索再生の制御機構の解析
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15J03481
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
アラム タニムル 名古屋大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | 線虫 / 神経 / 再生 / HIF-1 / セロトニン / RhoA / cAMP |
Outline of Annual Research Achievements |
神経軸索の再生機構の研究は、事故や手術などで切断された神経の再生医療に繋がることから 、学術的にも社会的にも極めて重要である。申請者はこれまでに線虫をモデル生物として、軸 索再生を制御するシグナル伝達経路の解析を行い、Rhoシグナル伝達経路が軸索再生に関与す ることを明らかにしてきた。これまでの研究成果を踏まえた仮説として、切断を受けた軸索においてセロトニン(5-HT)がセ ロトニン受容体によって受容され、セロトニン受容体は三量体G蛋白質の活性化を介してRhoシ グナル伝達経路を活性化するという可能性が考えられる。 そこで、この仮説を検討するために、平成27年度はRhoシグナル伝達経路の上流因子に焦点を当てて解析を行った。その結果、軸索切断が低酸素誘導性転写因子であるHIF-1を介して、切断された非セロトニン作動性神経でのセロトニンの異所的発現を誘導することを見出した。また、5-HTが5-HT受容体であるSER-7を介したオートクリンシグナル伝達によって軸索再生を促進することもわかった。さらに、RhoGEFであるRHGF-1とRhoGAPであるRGA-5が軸索再生の調節因子であることも突き止めた。SER-7からのシグナル経路の1つは、G12αおよびRHGF-1を介してC. elegansのRhoAホモログであるRHO-1を活性化する。この経路において、RHO-1はジアシルグリセロールキナーゼであるDGK-1を阻害し、その結果ジアシルグリセロールの量が増加し、軸索再生が引き起こされる。SER-7はまた、サイクリックAMP(cAMP)シグナルも活性化することにより軸索再生を促す。これらのことから、HIF-1を介した5-HTシグナルの活性化は、RhoA経路およびcAMP経路の両方を活性化することにより軸索再生を促進することが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では、切断を受けた軸索においてセロトニン(5-HT)がセ ロトニン受容体によって受容され、セロトニン受容体は三量体G蛋白質の活性化を介してRhoシ グナル伝達経路を活性化するという可能性について検討する予定であったが、これに加えて軸索切断が低酸素誘導性転写因子であるHIF-1を介して、切断された非セロトニン作動性神経でのセロトニンの異所的発現を誘導することやSER-7がサイクリックAMP(cAMP)シグナルを活性化することにより軸索再生を促進することも解明することができた。これらの進捗状況から、本研究は当初の計画以上に進展していると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
2年度目にあたる平成28年度は当初の計画通りRhoシグナル伝達経路の下流因子の解析を行う予定である。具体的には、RHO-1→RTEK-1→LET-502→MLC-4経 路がミオシン軽鎖のリン酸化レベルおよび局在を制御するかを検討するために、免疫蛍光染色 法によって神経切断後のミオシン軽鎖のリン酸化レベルおよび局在を調べる。次に、rtek-1変 異体とlet-502変異体においてこのリン酸化、局在が影響を受けるかを解析する。さらに、リ ン酸化型ミオシン軽鎖は、ミオシンのモーター活性を高めることでアクチン細胞骨格を制御し ている。そこで、F-アクチンを特異的に検出するlifeactをVenusに融合させた蛋白質を線虫に 発現させることで、神経切断後のアクチンの局在を調べる。次に、rtek-1変異体とlet-502変 異体においてアクチン細胞骨格の異常がみられるかを解析する。
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Research Products
(2 results)