2016 Fiscal Year Annual Research Report
ショウジョウバエ腸管において細菌を見分ける新規メカニズムの解明
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15J03552
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
堀 亜紀 金沢大学, 医薬保健学総合研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | 腸管免疫 / 腸内細菌 / ショウジョウバエ |
Outline of Annual Research Achievements |
腸管内には大量の腸内常在菌が存在するため、有害な病原性細菌は排除し、宿主にとって有益な働きをする腸内常在菌は適切に維持するための特別なメカニズムが存在すると考えられる。私は腸管における新規の免疫応答経路を見つけることで、この特別なメカニズムの解明に迫ろうと考えた。これまでに、グラム陽性菌経口感染時の免疫応答の解析を行い、Imd経路を介してストレス応答因子の発現が誘導されることを明らかにした。この機構は既知の抗菌ペプチドの産生によらない全く新しい防御応答であり、上流でグラム陽性菌の感染を認識してImd経路を活性化する機構は、既知の因子によらない新規の機構であることが示唆されている。このことから私は、グラム陽性菌特有の構成成分や代謝産物、あるいは腸内環境の変化を認識することが重要なのではないかと予想し研究を行った。 グラム陽性菌経口感染後の腸管での遺伝子発現変化をDNAマイクロアレイ解析により調べたところ、味覚受容体や嗅覚受容体といった低分子化合物の受容体の発現量が経口感染により変化することが示唆された。そこで、これらの低分子化合物の受容体が病原性細菌や腸内常在菌に特有の低分子化合物を認識し、腸管での免疫応答を制御しているのではないかという仮説をたて検証を行った。 本年度は、ショウジョウバエを完全に無菌化し特定の細菌のみを定着させて解析を行なうために必要な、無菌アイソレータを用いた無菌ショウジョウバエの作成のための方法を確立し、安定的に作成することに成功した。この無菌ショウジョウバエには通常の腸内細菌がいる場合には定着しない菌が定着する可能性が示唆されている。また、腸管で低分子化合物受容体の発現量が高い内分泌細胞のレポーターショウジョウバエを、様々な受容体欠損バックグラウンドで作製した。 本年度の成果をもとに、来年度はさらなる発展が期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度は、ショウジョウバエを完全に無菌化し特定の細菌のみを定着させて解析を行なうために必要な、無菌アイソレータを用いた無菌ショウジョウバエの作成のための方法を確立し、完全に微生物freeのショウジョウバエを安定して作成することが可能になったから。この技術はこれまでに報告がない非常に有用な技術であり、本研究をすすめる上でとても重要な成果である。 また、様々な低分子化合物受容体の欠損バックグラウンドの内分泌細胞レポーターショウジョウバエを作製したことや、様々な細胞をFACSにより分けて回収する系を確立したこと、さらに、ショウジョウバエ野生型個体や自然免疫経路の変異体における腸内細菌叢の違いを、次世代シーケンサーを用いたメタ16S解析により調べ、エサや飼育環境の違いが腸内細菌叢にあたえる影響の解析を行ったことから、今後の研究に必要な基本的なデータやツールをそろえることができたため、「当初の計画以上に進展している」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
作製した無菌ショウジョウバエに、単離した特定の腸内細菌や黄色ブドウ球菌のみを定着させたノトバイオートショウジョウバエを作成し、様々な低分子化合物受容体の欠損バックグラウンドの内分泌細胞での遺伝子発現変化をRNAseqにより網羅的に調べ比較する。また、腸管の内分泌細胞以外の細胞についてもレポーターショウジョウバエを用いてFACSによりsortingし、RNAseqを行ない遺伝子発現変化を比較する。遺伝子発現変化が見られた低分子化合物に着目して、研究計画に従い更に詳細な解析をすすめる。 また、研究成果を論文としてまとめる。
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Research Products
(6 results)