Outline of Annual Research Achievements |
1. 平成28年度における研究実施状況 平成28年度は, 細胞環境におけるタンパク質機能解析に重要となるレアイベントを再現するために開発した計算手法を適用し, タンパク質機能解析を実施した.
2. 研究成果 レアイベントを計算機上に効率的に再現するために, (1) 構造変化を誘起する可能性が高い初期構造選択と, (2) 複数の短時間MDによる初期構造のリサンプリング過程から成る方法論を提案し, 様々な生体系に適用した. 本手法で鍵となるのは, 構造変化を誘起する可能性が高い初期構造を適切に選択するということである. 本報告では, 本研究課題において開発したいくつかのタンパク質レアイベント探索手法から, OFLOOD法[R. Harada, et al, J. Comput. Chem., volume 36, pages 97-102, (2015)] を適用することで解明したタンパク質フォールディング機構について解説する. 具体的には, OFLOOD法を適用することにより, 通常の単純な2状態遷移とは異なる複数の準安定状態を経由する多段階のフォールディング機構の存在を明らかにした. 例として, タンパク質(PDBid: 1E0Lおよび1FME)へ適用することにより得られた計算結果について解説する. 特筆すべき点として, タンパク質の天然状態における2次構造に着目し, その部分的な平均自乗距離(RMSD)を定義し, 反応座標に採用することで, タンパク質の速やかなフォールディングには2次構造形成が重要な役割を果たしていることを明らかにした. 本研究内容は, J. Comput. Chem. volume 38, pages 790-797 (2017)として受理され, カバーレターに採用された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度は, OFLOOD法[R. Harada, et al, J. Comput. Chem., volume 36, pages 97-102, (2015)] を適用し, タンパク質フォールディング機構に重要な2次構造生成の役割について解明することが出来た. 特に, OFLOOD法を適用することで, 通常の単純な2状態遷移とは異なる複数の準安定状態を経由する多段階のフォールディング機構の存在を明らかにすることが出来た. また, タンパク質の天然構造へ至る速やかなフォールディングには, 2次構造形成が重要な役割を果たしていることを明らかにした. これらの研究成果は, J. Comput. Chem. volume 38, pages 790-797 (2017)として受理され, カバーレターに採用された. 故に, 本研究課題はおおむね順調に進展していると言える.
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Strategy for Future Research Activity |
今後の展望として, 細胞環境により近い分子混雑環境を陰溶媒モデルで構築し, 全原子モデルとの併用により, 計算精度の高い分子動力学シミュレーションを実施する予定である. 特に, 最終年度は実際の細胞環境内(分子シャペロン内)を模した分子混雑におけるフォールディングシミュレーションを実施する. また, 最終年度に, 初年度及び次年度の研究成果を論文にまとめ, 投稿する.
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