2015 Fiscal Year Annual Research Report
分子・プラズモンの発光過程における「多体量子ダイナミクス」の理論領域の開拓
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15J03915
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
三輪 邦之 国立研究開発法人理化学研究所, Kim表面界面科学研究室, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | 走査トンネル顕微鏡発光 / 表面・界面物性 / 分子発光 / プラズモン / 光物性 / 密度汎関数理論 / 非平衡Green関数法 |
Outline of Annual Research Achievements |
表面吸着分子系からのSTM発光の理論構築を目標に、(1)Maxwell方程式に基づく「電磁場解析の手法」、(2)DFT計算、(3)非平衡Green関数法を用いた理論研究を推進した。(1)では、STM探針の曲率や探針―試料間距離、金属の種類等を様々に変えて、探針/真空/基板の界面近傍に局在する界面プラズモンの光学特性を系統的に調べ、得られた成果を国内・国際学会にて発表した。(2)では、貴金属表面に蒸着した数原子層のNaCl絶縁体薄膜の上に、有機分子が吸着した系の物性を解析した:(2-1)まず基板の物性を調べるため、1-4原子層のNaCl薄膜をAu(111)表面にそれぞれ蒸着した系を解析した。NaClの膜厚変化に対する系の仕事関数の変化を調べるとともに、STMを用いた仕事関数推定の実験結果と比較するため、有限電圧を印加した際の電子構造をシミュレートした。探針―試料間の真空領域における静電ポテンシャルにより電子が定在波を形成することで生じる表面状態について、そのエネルギーのNaCl膜厚依存性を明らかにし、実験結果を説明した。(2-2)つぎに、吸着分子の構造特性・電子特性を明らかにするため、2原子層のNaCl薄膜にフタロシアニンおよびそのマグネシウム錯体が吸着した系を解析した。分子の吸着構造および配向を調べ、吸着特性を決める機構を解明した。得られた成果を科学論文にて発表した(K. Miwa et al., PRB, 2016)。(3)では、絶縁薄膜蒸着金属表面上の分子からのSTM発光を想定し、系の光学特性を調べた。分子励起子と界面プラズモンが結合することで生じる結合モードの干渉が、系の発光スペクトル形状に顕著な影響を与えること示し、その成果を発表した(K. Miwa et al., eJSSNT, 2015.)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画に沿って、表面吸着分子系からのSTM発光を定量解析できる理論手法の開発に向けた研究を行った。またNaCl薄膜蒸着Au表面の電子特性の解析、および、NaCl薄膜上のフタロシアニンの吸着特性の解析においては、実験グループとの共同研究を行うことができ、実験結果との比較を行うことで、より詳細な解析を行うことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、(1)電磁場解析の手法、(2)DFT計算、(3)非平衡Green関数法を用いた理論研究のそれぞれにおいて研究成果を挙げることができた。次年度はこれらの研究内容を発展させつつ、得られた知見を統合し、表面吸着分子系からのSTM発光を定量解析できる理論手法を開発することを目指す。
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