2016 Fiscal Year Annual Research Report
人工エナメル質形成を目指した細胞間結合分子の機能解明
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15J04116
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
千葉 雄太 東北大学, 歯学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | 歯の発生 / 歯原性上皮 / 幹細胞 / 遺伝子発現 / 分化誘導 / 増殖因子 |
Outline of Annual Research Achievements |
歯のエナメル質形成を行うエナメル芽細胞は歯の萌出後に消失してしまうため、人体においてエナメル質は再生しない。エナメル質の再生が実現することで、現在までの代替材料を用いた歯科医療は大きく変化する。歯原性上皮細胞はエナメル質の形成後消失してしまうため、人工エナメル質の形成には細胞のソースとしてiPS細胞や成体に存在する幹細胞の利用が考えられる。しかしながら、iPS細胞や歯原性幹細胞からエナメル芽細胞への運命決定を誘導する因子は特定されていない。また、人工エナメル質の形成を実現するには、エナメル芽細胞のみならずエナメル原器形成に関わるすべての系統の歯原性上皮細胞の制御機構解明が必須である。 本研究では歯原性上皮幹細胞とその初期分化細胞の遺伝子発現変化を解析し、幹細胞の維持に関する遺伝子やエナメル芽細胞を含む他の歯原性上皮細胞への運命決定を誘導する遺伝子の同定、及びその機能解析を行う。平成28年度はin vitroにおいて、生後マウス切歯に存在する歯原性上皮幹細胞より歯原性上皮幹細胞株を樹立し、その長期継代培養法と分化モデルを確立した。また、その幹細胞株を利用してRNAシークエンスを行い、幹細胞の分化段階における網羅的遺伝子発現解析を行った。その結果、それぞれの分化段階に応じて特異的に発現する遺伝子群を明らかにし、幹細胞維持に関わる候補遺伝子や運命決定に関わる候補遺伝子をスクリーニングすることができた。 この結果をもとに、平成29年度に予定しているin vivoにおける実験を総合して新規遺伝子の同定を行う。歯原性上皮幹細胞の網羅的遺伝子発現解析は未だ報告がないため、幹細胞株を利用したデータは大きな支持となる。また、新規遺伝子の同定後にこの幹細胞株を利用して実証実験を行い、機能解析を行うことが可能となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
in vivoにおける実験に関して、当初外部研究所から実験に用いるマウス系統を譲渡してもらう予定だったが計画に変更が生じた。そのためマウス系統の確保に時間がかかったため、in vivoでの実験が大幅に遅れている。幸い、同研究所に所属する研究室から蛍光タンパクレポーターマウスを譲渡していただいたため、目的とする歯原性上皮幹細胞の抽出は可能であることが確認できた。 また、歯原性上皮幹細胞株の培養に関して、細胞の培養条件の最適化、並びに初期分化マーカーの誘導実験に時間がかかった。特に、初期分化マーカーの発現は一過性であるため、その確実な誘導条件の決定は根気のいる作業であった。 歯原性上皮幹細胞株に関して、研究室で樹立された細胞株を使用する予定であったが、細胞の長期培養方法に問題があり、細胞の一部が幹細胞マーカーの発現を維持できていなかった。そのため、その細胞軍から単一細胞を抽出し、状態の良い細胞から再度細胞株クローンを樹立する必要があった。 分化マーカーの誘導に関して、当初の実験計画では、分化誘導に重要な転写因子のトランスフェクションを予定していたが、トランスフェクション効率を含めた細胞のコンディションに影響されるため初期分化誘導に成功する確率が低く、RNAシークエンスに必要となるサンプル数を用意することができなかった。そこで、予定を変更し、増殖因子による分化誘導を行った。 また、研究室の移動に伴い、プロトコールの変更や実験を行う手続きに手間を取られた。実験の引き継ぎに関して、前任者が既に研究室を離れていたこともあり時間がかかり、当初の計画よりも遅れをとった。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度はin vivoにおけるRNAシークエンスを行い、幹細胞の維持に関する遺伝子やエナメル芽細胞を含む他の歯原性上皮細胞への運命決定を誘導する遺伝子の同定、及びその機能解析を行う。 1、細胞の抽出方法の最適化:in vivoの実験系では細胞の抽出方法を最適化する必要があるため、はじめに野生型マウスを用いて細胞抽出時の条件を最適化する。具体的には、歯胚の解剖方法、酵素の処理時間が検討項目となる。これらの条件で得られる細胞数、並びに細胞のコンディションが影響されるため、抽出した細胞を用いてreal-time PCRを行い、分化段階に応じた遺伝子発現を確認することで細胞のコンディションが保たれているかを確認する。 2、蛍光タンパク質レポーターマウスを用いた細胞の抽出:歯原性上皮幹細胞及び初期分化細胞に特異的なマーカー蛍光タンパク質レポーターマウスを用いて、細胞のエンリッチを行う。まず初めに、マウス系統を交配し、目的とする細胞に蛍光タンパク質が発現していることを確認する。次に、FACSを用いて全体の細胞数、実験に用いる細胞の割合を確認する。その結果から、得られるサンプル量を算出し、実験に最適な週齢、および実験に用いるマウスの頭数を決定する。この最適化された条件でセルソートを行い、RNAシークエンスのサンプルを準備する。 3、RNAシークエンスによる網羅的遺伝子解析並びに新規遺伝子の同定:上記サンプルでRNAシークエンスを行い、幹細胞維持に関わる新規遺伝子や運命決定に関わる新規遺伝子を決定する。その際、平成28年度に行った実験結果である、in vitroの幹細胞株を利用したRNAシークエンスで得られた情報や、文献から得られた情報を総合して判断する。その後可能であれば同定した遺伝子の発現ベクターを作製し、平成28年度に樹立した歯原性上皮幹細胞株を用いて機能解析を行う。
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[Presentation] Epiprofin and T-box1 regulate the ameloblast lineage development2017
Author(s)
Yuta Chiba*, Kiyoshi Sakai, Tomoko Ikeuchi, Keigo Yoshizaki, Darius Mahboubi, Takashi Nakamura and Yoshihiko Yamada
Organizer
The International and American Association for Dental Research 2017 GENERAL SESSION
Place of Presentation
Moscone Convention Center, サンフランシスコ(カリフォルニア、アメリカ)
Year and Date
2017-03-22 – 2017-03-25
Int'l Joint Research
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