2015 Fiscal Year Annual Research Report
対テロ政策をめぐる「国際機構間関係」論―国連安保理への《協力》と《抵抗》―
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15J04140
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
大道寺 隆也 早稲田大学, 政治経済学術院, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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Keywords | 標的制裁 / 国際機構 / 国際法 / レジーム / 国際機構間関係 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、国際連合安全保障理事会(国連安保理)が主導する対テロ政策の立案、実施および司法審査の諸過程を、国連と欧州連合(EU)や欧州審議会(CoE)などの地域的国際機構との「国際機構間関係」に着目し分析することを目的としていた。この目的を達成するため、本年度は、国際機構の相互作用、すなわち「国際機構間関係」論を基礎づけるための理論研究を中心に行った。特に、研究対象である国際機構の特質に鑑み、国際関係論と国際法学の双方の議論動向に目を配るよう心掛けた。 国際関係論の視点からは、国際機構研究の系譜を、「レジーム(複合)」論を中心に検討した。また、国際法学の視点からは、「立憲化」論や「立憲的多元主義」の議論を検討した。その結果として、安保理のような国際機構の決定が帯びる権力性を、他の機構との国際機構間関係の中でいかに統御するかに関心を払うという問題意識をもつ本研究が、先行研究とより精緻に差異化された。また、理論研究を踏まえて、国連安保理決議、ならびに安保理関連機関や地域的国際機構の文書や判決を含む一次資料の調査を行った。 その結果として、テロ対策に関連した安保理制裁(個人・団体を対象とした制裁=標的制裁)に伴う権利侵害の問題をめぐって、国連と他国際機構がどのような相互作用をし、いかなる帰結を生じたかを明らかにした。これらの成果は、「国際テロリズム規制における地域的国際機構の役割――『標的制裁』への適正手続導入過程の分析から――」『国際政治』第182号、2015年、98-110頁として発表したほか、海外学会(Asian Society of International Law、2015年11月26~27日、タイ)およびワークショップにおいて報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
国際機構間関係を分析するための理論的な土台を固めるという作業は十分進展したと考える。また、事例研究の柱となる標的制裁に関する、文献資料を用いた調査はおおむね完了している。それゆえ、次に記す翌年度のインタビュー調査の準備はできつつある。しかしながら、Asian Society of International Lawにて報告したペーパーを修正し、Asian Journal of International Lawに投稿するという作業が年度をまたいでしまった点は遅延であり、早急に完了させたい。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究は、2つの柱を中心に行う。第一に、標的制裁の事例以外でも国際機構間関係の枠組が有効であることを確認するために、テロ対策と関連した別の事例の検討を行う。具体的には移民・難民政策や、米国による特別移送(extraordinary rendition)といった事例が候補に挙がっている。第二に、文献調査からははっきりと確認できない部分に関するインタビュー調査をヨーロッパにおいて行う。実施時期は2016年夏期を予定している。また、2015年度に引き続き、国内外の研究者とのネットワーキングも積極的に行いながら、成果の報告・出版を試みる。
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Research Products
(4 results)