2016 Fiscal Year Annual Research Report
ウイルスタンパク質による感染細胞内ミトコンドリアの生理機能に及ぼす影響の解析
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15J04145
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
吉住 拓馬 九州大学, システム生命科学府, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | ミトコンドリア / 抗ウイルス自然免疫 / 酸化的リン酸化 / mtDNA / RLR経路 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度のミトコンドリア呼吸活性の抗ウイルス自然免疫応答(RLR経路)における重要性に関する知見を基に、研究を継続した。具体的には、ミトコンドリアの呼吸活性を司る内膜の呼吸鎖複合体の機能に着目し、研究を推進した。 ミトコンドリアは独自のゲノム(mtDNA)を有しており、一部の呼吸鎖複合体のサブユニットやrRNA、tRNAがコードされている。これまでに呼吸鎖複合体の機能低下を伴う深刻な病態を引き起こすmtDNAの変異が報告されており、それらの変異を保持したmtDNAを有する細胞(サイブリッド)が樹立されている。今年度はmtDNAの変異により呼吸鎖複合体が機能障害を引き起こしており、呼吸活性が低下しているとされる細胞をモデルとして研究を行った。 まず、これらの細胞のATP合成能についてATPセンサー分子(ATeam1.03)を用いたイメージング解析を行った。その結果、解糖系が亢進した条件(グルコース培地)では差は見られなかった。しかし、ミトコンドリア呼吸活性が亢進した条件(ガラクトース培地)ではmtDNAが変異している細胞では細胞質中のATP濃度が低下することが確認され、確かに呼吸活性が低下していることが示された。実際に、RNAウイルス感染に対する感受性(RLR経路の活性化)をウエスタンブロッティングによる転写因子の活性化の確認やELISA法によるI型インターフェロンおよび炎症性サイトカインの分泌量の測定により評価したところ、野生型の細胞と比較してmtDNAが変異している細胞では明らかにウイルス感染に対する免疫応答が弱くなっていることが確認された。一方で、基質の添加により呼吸鎖複合体の活動をレスキューすると免疫応答が回復した。このことから、呼吸活性の維持がRLR経路の活性化に必要であることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の目標の一つであった「ミトコンドリア呼吸活性と自然免疫応答との関係の解明」については興味深い知見が数多く得られている。また、酸化的リン酸化の制御に関わるミトコンドリアタンパク質の役割についても研究が進められており、概ね順調に研究を推進できていると思われる。現在、得られた成果を取りまとめた論文を国際誌に投稿中である。
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Strategy for Future Research Activity |
ミトコンドリア呼吸活性の低下はRLR経路の活性化に悪影響を及ぼすことはこれまでの研究結果から示されている。一方で、なぜミトコンドリアの呼吸活性が低下するとRLR経路の活性化が阻害されてしまうのか、その分子メカニズムは依然として明らかにされていない。そこで、現在私たちはミトコンドリア内膜に局在しミトコンドリアそのものの形態調節や内膜、特にクリステの構造形成に必須の分子に着目して研究を進めている。今後、この分子のノックアウト細胞や変異体を導入した細胞を作製し、免疫応答やミトコンドリアの形態、構造解析など詳細な解析を行う予定である。
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Research Products
(2 results)