2016 Fiscal Year Annual Research Report
Comparative Study on Social Accountability Mechanism in Malaysia and Indonesia
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15J04417
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
伊賀 司 京都大学, 東南アジア研究所, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | 社会的アカウンタビリティ / メディア / 社会運動 / 東南アジア |
Outline of Annual Research Achievements |
研究計画の2年目にあたる28年度には、マレーシアを中心に社会的アカウンタビリティ・メカニズムを行使する主体としての社会運動、NGO、メディアに注目し、関係者にインタビュー調査や非公式の場での聞き取りを行った。 今年度に詳細な調査を行ったものの中に、選挙制度改革運動として始まり、現在ではナジブ政権のスキャンダルや汚職に対する批判を強めているブルシ運動がある。実際にブルシ運動の活動家やジャーナリストにインタビューを行ったほか、11月19日にクアラルンプールで行われた3万から4万人規模のマレーシアでは比較的大規模な街頭デモの現場に行って参与観察を行った。また、ブルシ運動の関連資料の収集も行った。ブルシ運動は2006年に発足して以降、紆余曲折を経ながら10年以上の間続き、さらに数万人から時には10万人を超える参加者を動員してマレーシアの社会運動としては成功の部類に入る。しかし、こうしたブルシ運動による動員の成功の一方で、ブルシ運動が社会的アカウンタビリティの行使主体として、選挙管理委員会、汚職撲滅委員会、会計検査院といった政府内部の水平的アカウンタビリティを担うべき機関への働きかけがうまくいっているとは言えず、マレーシアの社会運動が制度的変化をもたらすことの困難さを活動家ら自身も感じていることがわかった。 また、学振特別研究員の採用期間中に深刻化したナジブ首相の関わる1MDBスキャンダルによって反汚職委員会や検事総長が更迭されており、マレーシアの既存のアカウンタビリティ制度を揺るがしている。そこで、28年度中には、その動向を追いながら、水平的アカウンタビリティの可能性と限界を明らかにしようとした。 28年度には、このマレーシアの状況の比較対象とすべきインドネシアの汚職関係のNGOにも接触してインタビューを行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画で予定していたように現地でのインタビュー調査が概ね予定通り進んだ。関係者に直接的に接触したために、ニュースや文字情報だけではわからない細かな前提や状況の把握に大いに役立った。
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Strategy for Future Research Activity |
28年度のインタビューを中心とした現地調査の結果を踏まえ、今後はナジブ政権下のマレーシアのアカウンタビリティ制度の激変を明らかにしながら、社会的アカウンタビリティ・メカニズムの可能性と限界に焦点を当てて研究をまとめていくつもりである。その際には、インドネシアの状況も比較の観点から考慮に入れて議論を進める予定である。
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Research Products
(5 results)